ハイリスク・ハイリターンといわれているエンジェル投資。
一発当たれば、数百万の出資で数億円のリターンとなることがある。
日本でも有名なエンジェル投資家たちがニュースなどで取り上げられており、注目を集めている。
また、エンジェル投資は金銭的なリターンのみではない。
業界を動かしたとして有名人になることができたり、「若い企業を育てたい」という想いが叶う喜びや達成感も味わうことができる。
たとえ余剰資金であったとしても、リターンを目的としない投資家は存在しない。
そこで、リターンを得る方法やリターンを得るために重要なことを解説していく。
エンジェル投資でリターンを得る方法
エンジェル投資はスタートアップやベンチャーなど未上場企業に出資をするかわりに、その企業の株式を発行してもらう。
そして、未上場企業がIPOまたはM&Aした時、株式市場にて株式を売却してリターンを得る。
大企業や中小企業などの通常の株式と違って、未上場企業はIPOやM&Aした時、株式の価値が何十倍にも膨れあがる。
例えば、Facebookはエンジェル投資家たちに約5,500万円を出資してもらった結果、約1,000億以上の評価額となった。
Googleは約1,100万円の出資に対して、評価額は約300億円になったといわれている。
エンジェル投資は成功すれば、1,000倍以上のリターンとなることがあり、夢のような投資である。
リターンを得る確率
現在、未上場企業がIPOやM&Aする確率は0.2%といわれている。
ベンチャー企業が創業3年を超えることは非常に難しく、多くは1~3年の間に倒産してしまう。
もちろん、倒産した場合、株式は無価値になる。
数億円のリターンを得て成功した投資家たちでも、その裏で100以上のエンジェル投資に失敗している。
だからこそ、リターンを得る確率を上げるためには、何度失敗しても問題がない資金を持っていること、強い精神と挑戦心、目利きだったり、起業家をサポートするための能力なども必要となってくる。
もし、あなたがエンジェル投資を始めようと思うなら、最初は失敗することを覚悟した方がよいだろう。
失敗を重ねることで、経験値を身につけて、地道にリターンの確率を上げていくしかない。
そうなると、会社経営者や著名な起業家など、限られた人しかエンジェル投資家にはなれないことになる。
しかし、近年では少額投資も普及し始めており、サラリーマンや主婦など一般の人にもエンジェル投資家への道が開いている。
少額投資には株式投資型クラウドファンディングがある。
正しくは株式ではなく、新株予約権で取引するものだ。
新株予約権の場合は株主総会に出席できないなど、経営面の干渉はできない。
こちらもリターンの確率はゼロに近いが、まったくないわけではない。
2019年には国内で1件、リターンを得ることができた案件があった。
少額投資は10万円程度の投資であるため、失敗したとしても次に挑戦しやすい。
また、(クラウドファンディングであるために)不特定多数の意見を参考にすることができ、注目されている業界やトレンドがわかりやすい。
ここで何度も失敗して、起業家やビジネスを見る目を養うのもよいだろう。
リターンにはどのぐらい時間がかかるのか
エンジェル投資は長期戦であり、多くはリターンまで5~10年以上の時間が掛かる。
失敗したかどうかも、早くわかる場合と、時間が掛かる場合がある。
その年の流行や市場などに影響されるため、長い時間を掛けても必ずリターンが返ってくるとはいえない。
少額投資(株式投資型クラウドファンディング)の場合、 新株予約権の権利行使期間は運営会社ごとに7年や10年などと決められている。
リターンを狙うためにするべきこと
エンジェル投資家たちは(ハイリスク・ハイリターンな投資であるために)余剰資金を投資している場合がほとんどだ。
しかし、「企業や業界の発展を応援したい」という想いだけで投資はおこなわないし、余剰資金だからといって多額の資金を失うことに抵抗がないわけではない。
一獲千金を狙っているわけではないが、きちんとリターンは望んでいる。
そんな投資家たちはリターンを狙うために何を見ているのだろうか。
①起業家の「人間性」
著名なエンジェル投資家の多くは、起業家の「人」の部分を大事にしている。
企業は起業家ひとりではなく、従業員や顧客など、多数の人で成り立っている。
そのトップに立つ人間が頼りなく、能力が足りないようでは、人を惹きつけることはできない。
人がいないということは、企業も成り立たない。
そのため、まず求めるものは「組織力」だ。
組織の上に立って、人を付いてこさせることができるのか、組織を成り立たせ、組織を上手く回していけるのか。
次に「決断力」。
企業を長く運営していくためには、ずっと同じスタンスでいるのは難しい。
課題は常にあり、頭を悩まされるだろう。
受け入れがたい変化を求められることもあるかもしれない。
そのような時に何も決断できないようではダメだ。
そして「スピード」。
決断した時、何かアイデアを思いついた時、実行が早いかどうかも大切な要素だ。
アイデアを試してみて、失敗してもすぐ別のアイデアを出し、すぐに試す。
成功者はこの繰り返しを非常に速くおこなうことができる人が多い。
「分析力・情報収集力」も重要だ。
斬新なものばかりが流行るのではなく、市場に「今」需要がある事業が発展する傾向にある。
だからこそ、「なぜ、今、起業をするのか」この質問に明確な答えを持っている人が望ましい。
さらに「コミュニケーション能力」。
起業家たちは、企業を広める活動をしなくてはいけない。
PRや人脈作り、従業員への指示など、起業家の仕事の多くはコミュニケーションである。
コミュニケーション能力の高さは、相手に自分の意思をわかりやすく伝えられているか、相手の意図を汲み取ることが長けているかである。
最後に大事なことは「その人の下で働きたいと思える起業家」であること。
将来性のある起業家は尊敬できるところがあり、人を自然と引き寄せる。
人も集まれば、仕事も集まる。
こういった起業家の「人」の部分を知るために、リターンを狙う投資家は、起業家と積極的に関わる必要がある。
②市場分析
斬新なビジネスプランを見ると惹かれてしまうだろう。
市場に新しい動きを作るのではないか、革命をもたらすのではないかとワクワクする案件である。
しかしながら、それが斬新だからという理由だけでは、成功につながらない。
今、知名度が高いGoogleやiPadも実は革新的なサービスではなく、似たようなサービスは過去にあった。
世界中に広く知られている「Uber」もまた、斬新なものではない。
Uberが参入する1年ほど前には、ショートメッセージでタクシーを呼ぶサービスをおこなう会社があった。
この会社ではなくUberが成功した理由は、「なぜ、今なのか?」と問う先にある。
市場で重要なのは「誰が一番に始めたか」ではなく、「市場の需要にマッチしているか」ということである。
需要がある中で、新しいサービスを提供できれば成功する確率も上がるだろう。
斬新さだけに惹かれてはいけない。
斬新なサービスを「いつ(需要が高まっているとき)、世に出すか」を考えられているかが大事。
そのために、市場分析をすること、トレンドを把握しておくことは欠かせない。
スタートアップ・トレンド予測
最後に、2020年のスタートアップ・トレンド予測について述べておく。
2020年にはオリンピックもあり、モノ・カネの動きが大きく変動するかもしれない年である。
さまざまな予測がされている中で、特に注目されている分野を紹介する。
①ブロックチェーン
仮想通貨やゲーム、様々なものに応用が可能なブロックチェーン技術。
2019年はFacebookのテーブルコイン・プロジェクト「Libra」の発表や人民元デジタル通貨構想など、ブロックチェーン関連の業界が大きく盛り上がった年であった。
2020年もブロックチェーンを用いて新システムの開発をおこなう事業が広がり始めており、多くの投資家たちがブロックチェーン技術の展開に注目している。
②AI・VR/AR
AIやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)は2020年に一般化するのではないかと予測されている。
これまではBtoBでの活用が進められていたが、これからAIを用いたBtoCサービスが続々と登場する可能性があり、AIを用いた斬新なサービスをおこなう事業が注目を集めている。
VR・ARは、Appleの「ARグラス」やFacebookの「OciusQuest」などが注目を集めたこともあって、コミュニケーションデバイスでの発展が期待される。
また、そのようなコミュニケーションデバイスの広がりに伴う、新しい広告やセキュリティ事業も話題になるかもしれない。
③ヘルスケア
ヘルスケア領域はこれまでも衰えることがない領域であったが、今後も高齢化社会の影響があり、医療や高齢者向けのサービスなどが益々伸びるだろうと予測される。
まとめ
エンジェル投資は出資をした企業がIPOまたはM&Aで株式を売却したときにリターンを得る投資だ。
リターンは何十倍にも膨れ上がる可能性があり、1勝9敗でも大成功を収めることができる。
しかし、IPOまたはM&Aする確率は0.2%といわれている。
失敗がほとんどであり、失敗した場合は出資したお金は返ってこないため、超ハイリスク・ハイリターンだということを忘れてはいけない。
リターンの確率を上げるためには、失敗を恐れないこと、起業家を見る目を養うこと、市場分析、トレンドを把握することが大切だ。
2020年の主なトレンドは以下の③分野である。
①ブロックチェーン
②AI・VR/AR
③ヘルスケア
この他にも投資家の数だけ様々な分野の予測がされているので、あなたも一人の投資家としてトレンドを探求してみるといいだろう。
「なぜ、今、このサービスを世に出すのか?」のベストな解答が見つかれば、大きなリターンを得られるかもしれない。