少額でエンジェル投資をする方法

エンジェル投資といえば、少なくても数百万、多くて数千万円の投資がおこなわれる。

そのため、エンジェル投資家は莫大な資産を持つ人、事業を成功させた人などが多かった。

しかし、近年では、マッチングサイトで手軽にエンジェル投資家と起業家が繋がれることや株式投資型クラウドファンディングが新規参入してきたことによって、(サラリーマンのような)一般の人でもエンジェル投資家になることができる時代が来た。

少額投資の目的としては、「(少額投資をして)将来的に大きな利益を得ることができたら」といった期待が大きいだろう。

そんな少額投資をするリスクとリターン、少額投資をする方法や仕組みなどを詳しく説明していこう。

少額投資をする方法

まずは、実際に少額投資をする方法を説明する。

少額投資をする際に注意して欲しいことも最初に述べておく。

①マッチングサイト

マッチングサイトでも金額を自由に設定できることから、「1万~50万円程度の出資をしてください」といった起業家による募集を見ることがあるだろう。

「自己資金で数百万は賄うことができたが、あと数十万足りない」といった事情であれば、検討の余地はあるかもしれない。

しかし、その場合の株式の持ち株比率や利率を考えるとリターンは低くなる。

事業内容を見ても、その金額で運営していくことがまず実現可能かどうか不明瞭な場合は避けた方がいいだろう。

また、株式の扱いや配当金などについて触れていなかったり、「利率を数十%お渡しします」といったように、少額投資に対して大きなリターンを得られると宣伝している場合は出資法違反であり、注意が必要だ。

あるいは株式投資型クラウドファンディングの審査が厳しく、エンジェル投資家のマッチングサイトの審査が緩いことを悪用して募集している場合もある。

②株式投資型クラウドファンディング

信用性があり、少額投資から始められるのは、株式投資型クラウドファンディングだ。

クラウドファンディングは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を合わせた造語である。

その意味の通り、不特定多数の人がインターネットなどを通じて、事業や人に資金を提供することだ。

多くは、少しのお金を寄付する形式だが、ここでは不特定多数の投資家に出資してもらう代わりに、株式(新株予約権)を発行する。

アメリカやイギリス、先進国などでは早くからおこなわれていたが、日本では法律によって規制されていた。

しかし、2015年の金融商品取引法改正によって、株式投資型クラウドファンディングが日本国内で解禁された。

事業者たちは、金融庁から「第一種少額電子募集取扱業者」として認可を受けることで、株式投資型クラウドファンディングサイトを運営することができる。

そして、国内で最初に 「FUNDINNO」(株式会社日本クラウドキャピタル運営)が2016年11月に認可を受け、2017年4月に案件の募集を開始した。

株式投資型クラウドファンディングによる資金調達の金額は、2017年12月末時点では約5億円、2018年12月末時点では約15億円となっており、順調に普及し始めている。

2019年では約11億円と減少したものの、約3年間という少ない期間で累計約30億円以上が資金調達された。

さらに、①FUNDINNO型新株予約権サービスの開始、②大和証券グループやSBIグループ、CAMPFIREといった多額の資金をもつ企業が参入したこと、③エンジェル税制の適用が可能であることから、ますます株式型クラウドファンディングは広まることが予想される。

株式型クラウドファンディングのリスク

株式型クラウドファンディングのリスクは以下の通りである。

1. 起業家との積極的な交渉ができない

2. IPOやM&Aがない限り、株式を持ち続けなければいけない

3. 元本割れする可能性がある

起業家と積極的な交渉ができない点においては、エンジェル投資との違いでもある。

エンジェル投資は(個人にもよるが)経営へ干渉する場合があったり、エンジェル投資家を通して、他のエンジェル投資家や起業家との出会いがあったりと、密度が濃い付き合いをしていく。

株式型クラウドファンディングは、WEBサイトを通したやり取りしかできず、直接会ったり、連絡先を交換することを禁じられている。

エンジェル投資家が大切にしてきた起業家という「人」を見る機会が少なく、事業内容に関しても積極的な関わりが持てず、判断材料が乏しい中で投資をおこなうというリスクが生じる。

IPOやM&Aがない限り、株式を持ち続けなければならず、元本割れする可能性はこれまでのエンジェル投資家同様、このようなリスクは付き物だ。

0円になってしまうことも承知の上で、余剰資金で臨む形が良いだろう。

これらリスクを減らす方法がないわけではない。

1つは、エンジェル税制を活用すること。

企業、投資家ともにエンジェル税制の適用要件に当てはまっていれば、株式投資型クラウドファンディングでも適用可能である。

エンジェル税制を適用することができれば、投資した額の多くを所得税や株式譲渡益から控除することができる。

また、不特定多数の投資家が1つの案件に投資をすることもリスクの低減につながっている。

集まった資金の額、スピードなどから、ニーズや注目度の目安になる。

個人の判断ではなく、(投票のような)多数の意見が見られることは、投資先を失敗するリスクを減らす一助となっている。

株式投資型クラウドファンディングのリターン

イギリスやアメリカなど先進国では、多くのリターンの実績がある。

イギリスの株式投資型クラウドファンディング「Crowdcube」では、資金調達をした企業の約770社から約4%(約30社)がイグジットしたと公表されている。

その実例としては、E-car Club(イーカークラブ)、bidstack(ビッドスタック)などがある。

E-car Clubは、2011年9月に設立された電気自動車シェアリングサービスをおこなう会社だ。

株式投資型クラウドファンディングを利用し、世界で初めてイグジットした実例でもある。

2013年3月、Crowdcubeを通じて63人の投資家から約1,300万円の資金調達をおこなった。

そして、2015年7月にはヨーロッパ大手のレンタカー企業「Europcar」に買収(金額は非公表)された。

bidstackは、2015年10月に設立された。

サッカーゲームやカーレース、街並みの看板などゲーム世界の中に企業名を載せる広告代理店だ。

2015年12月に66人の投資家から約1,800万円を調達。

そして、2018年9月には、ロンドン証券取引所のプロ投資家向け新興市場(AIM)に上場した。

さらに、2019年7月には、国内で初めてイグジットの実例ができた。

(FUNDINNOを通じて)漢方生薬研究所社が、あるファンドと一部の株主との間で相対取引を実行した。

その結果、投資家たちが保有する1株500円の株式に対して750円での買い付けがおこなわれ、約1.5倍のリターンとなった。

このように、リターンはまったく望めないということでもない。

リターンには長い時間を必要とするため、まだ結果に至っていないだけである。

これからもこの株式投資型クラウドファンディングが普及していけば、国内でイグジットする企業も増え、リターンを望める可能性は高くなるかもしれない。

注目度が高い株式投資型クラウドファンディング

最後に、株式投資型クラウドファンディングの中でも注目を集めているサイトを2つ紹介する。

FUNDINNO

国内初、2017年4月に募集を開始した株式投資型クラウドファンディングサイト。

2020年2月現在、累計の成約件数は80件、成約金額は27億9,216万円。

市場全体の85%を占めている。

2019年には「FUNDINNO型新株予約権」や 資金調達支援ツール 「FUNDOOR」などのサービスがスタート。

「FUNDINNO型新株予約権」は、正しくは株式ではないため、投資家が株主とはならず、新株予約権者となる。

株主総会や株主としての同意などが不要なため、不特定多数の株主が増えることによる問題が解決する。

2019年10月にリリースされた「FUNDOOR」は、事業計画や資本政策、資金調達に必要な流れや資料作成をサポートしてくれるサービス。

起業家向けのサービスを提供することで、FUNDINNOの案件がますます増えることが期待される。

GEMSEE Equity(SBI CapitalBase)

2017年10月11日、SBIのグループ会社であるSBI CapitalBaseが設立。

2019年6月から投資家登録の受付を開始した。

SBIグループで築かれた高い信用と顧客数。

SBIインベストメントやSBI証券などベンチャー企業の支援に携わっていた経験も豊富である。

実績と経験を持った金融業界の大手が参入したことによって、市場に大きな影響を与えるだろう。

2020年2月現在、まだプロジェクト数は少ないが、情報を開示している量、資料や写真などが非常に多いことから、厳しい審査を通った信用性が高いプロジェクトであることが伺える。

また、ビジネスモデルや技術以上に、経歴、人柄、事業に対する想いなど、起業家に重きを置く形を採用している。

エンジェル投資家が「人」を見ることを重視していたことを考えると、魅力的な株式投資型クラウドファンディングサイトに成長していくのではないかとこちらも期待される。

まとめ

少額投資をする方法では、株式投資型クラウドファンディングをオススメする。

多数の投資家が1つの起業案件に対して少額の投資をおこない、株式(新株予約権)などを発行してもらう仕組みだ。

リスクとしては、エンジェル投資と同様、元本割れする可能性がある。

その上、起業家についてよく知ることが叶わない、結果が出るまで長い期間を必要とする(株式を持ち続けなければならない)など、リスクが大きい投資をおこなうことになる。

しかし、エンジェル税制を活用して所得税や株式譲渡益から控除を受けることで、リスクを減らすことができる。

また、多数の投資家による投資がおこなわれるため、期待値が高い企業を見つけやすく、投資先の失敗は減らせるかもしれない。

国外ではリターンの実績があり、株式投資型クラウドファンディングの利用も盛んだ。

国内では2019年7月、FUNDINNOを通じての取引で初めてイグジットが出た。

SBIグループなど金融業界の大手が参入してきた年でもあり、今後、市場の成長がとても期待できる。