経営戦略: 2008年7月アーカイブ

短期契約の駐車場運営

情報源:日本経済新聞 2008.03.04【15面】

ビジネスには、時間との戦いという面がある。時流に乗り遅れないようにすること、あるいは競合にいかに先んじるかといったことは、常に忘れてはならないことだ。

◆さらに大切なのは、「時は金なり」という側面だ。起業新規事業の立ち上げにあたり、いかに早く黒字化するかは、重要な問題だ。グズグズしていると、資金がどんどん流出していく。時間=お金だということを、痛切に感じさせられる。

◆その点、会社を辞めずに取り組む「週末起業」は有利だ。生活資金については、勤務先の給与により保証されている。大きな赤字は困るが、多少のことなら、何年でも事業を継続できる。

◆「二足のわらじ」の週末起業は、時間不足という悩みがあるのだが、上述の観点からすれば、時間経過=資金流出という心配はない。立ち上げてから収益が上がるまでの時間がかかるようなビジネスは、独立起業ではなく、週末起業で取り組む方が適している。

◆一方、時間をムダに過ごすことは、機会損失を招いていると考えることもできる。だから、「○○を遊ばせておくのはもったいない」といった発想も生まれる。

◆4日付けの日本経済新聞に「駐車場運営会社は改正建築基準法を受け、ビルなどの建設予定地を持つ土地オーナーからの3カ月-1年半の短期契約の獲得に力を入れている」という記事が掲載されている。

◆背景として、建築確認の審査期間が長引いていることがある。せっかく土地を確保しても、なかなか着工ができない。それまでの期間、土地を遊ばせておくのはもったいない。だから、「暫定的に駐車場で運用したいという声が増えている」のだそうだ。


「発想」と「実現」の間のギャップを埋める

●「時間」の要素をアイデアに採り入れると、新たなビジネスアイデアが生まれてくるものだ。今回のように、通常は「長期」なのだが、それを「短期」にしてみる、といった具合だ。

●たとえば「ウィークリーマンション」。敷金・礼金を払って月単位で借りるのではなく、敷金・礼金なしに1週間単位で借りることができる。実際には2日間から契約できるようだ。

●「家事代行」も同様だ。かつては住み込みのお手伝いさんを雇ったりしたものだが、週に1日、2時間程度といった利用の仕方ができるようになった。

●「長期」では取り込めなかった需要も、「短期」にすれば、それが可能になる。野菜や惣菜を一人前に小分けして売るようなもので、文字とおり「スキマ」の市場を獲得できる。

●もちろん、その発想は良しとしても、それで採算が合うかどうかは検討しなければならない。記事の駐車場の場合、料金精算機械ではなく有人管理にしたり、地主との交渉で、賃料を「通常の半額程度に抑え」るといった工夫をしている。

●そもそも今まで「長期」しかなかったのは、「短期」では採算が合わないからだったわけだ。今回の記事の取り組みには、単純に時間を短くすることにとどまらず、過去の「常識」への挑戦という意味合いも含まれることにも着目しておきたい。

●「ちょっとしたアイデア」と片付けられてしまうケースも多いのだが、発想することと、それを実現することの間には、大きな隔たりがある。その「隔たり」を乗り越える取り組みなしに、新発想に基づくビジネスが実を結ぶことはない。


教訓

あなたの企業が提供している商品・サービスについて、その「時間」の要素を変えてみるとどうなるだろうか。顧客にメリットをもたらすのなら、ぜひ実現を考えてみたい。過去の「常識」への挑戦となることを覚悟し、工夫を凝らしてみよう。

(経営戦略考より)

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研修施設を新設する企業が相次ぐ

情報源:日本経済新聞 2008.03.03【15面】

◆さまざまな中小企業経営のお手伝いをしてきた。コンサルタントとして、いろいろなアドバイスをするのだが、必ずしもそれらのすべてが受け入れられるわけではない。

コンサルタントアドバイスされたことを理解し、ほとんど納得していても、やはり実行するには勇気がいる。そのような経営者を励ますのもコンサルタントの役目だが、最終的には経営者が判断することだ。

コンサルタント経営者に選択肢を提供するのであって、何かを強要する存在ではないし、その立場にもいない。自社の現状を最もよく理解しているのは経営者であり、コンサルタントとしてできるのは、経営者の意思決定をサポートするところまでだ。

経営者コンサルタントアドバイスを受け入れ、本気で取り組む気持ちになったかどうかは、自社の組織人事変更に着手したかどうかでわかる。

◆だから、経営者から組織人事の相談を受けると、「いよいよ本気になってくれたんだな」と感じる。組織変更人事異動は、経営資源の配置と配分を変えることを意味し、トップだからこそ出来る戦略的打ち手なのだ。

◆何事も「本気」で取り組まなければ、成果など上がるものではない。経営者の「本気」度は、組織変更人事異動という形で顕在化する。気持ちは必ず、形になって現れるものなのだ。

◆3日付けの日本経済新聞に、「多数の従業員を集めて教育を実施する研修施設を新設する企業の動きが相次いでいる」という記事が掲載されている。それらの企業は、人材育成に「本気」なのだということが感じられる。


「本気」は「形」に現われる

●記事には、具体的に5社の事例が取り上げられている。業種はバラつくが、共通しているのは、いずれも売上や従業員数が急激に拡大しているということだ。

●企業の成長に伴い、人材の育成が急務となってくる。人材が順調に育たなければ、それが成長の足かせとなる。「本気」になって取り組まなければ、成長機会を逃してしまうわけだ。

●どの企業でも、人材育成が重要だということは理解している。しかし、どこまで「本気」かと言えば、その温度差は大きい。今回の記事のように、自前の研修施設をつくるのは、かなり「本気」度が高い。

●まず「形」から入ると言うが、研修施設という器を作ることも、その一つと言えるだろう。組織人員体制を変えることも、「形」を整えることを意味する。

●私が以前に在職した英語研修会社では、リクルート部という部署をつくり、求職者を迎え入れたり、面接をしたりするスペースを設けた。企業規模からして分不相応という意見もあったが、結局、その取り組みのおかげで急成長を遂げることができた。

●今回の記事で事例して挙げられた企業は、研修施設をつくる前は、教育といえばOJTが中心で、集合研修をする場合でも、社外の会議室を借りて実施していたという。このような取り組みでは間に合わないという意識があったのだろう。

●「仏作って魂入れず」では困るが、「形」も整えずにお題目ばかり唱えていてもしょうがない。「本気」は「形」に現われる。自社の施策への取り組みが「本気」かどうか、まずは「形」を作っているかどうか、点検してみるとよいだろう。


教訓

あなたの企業では、自社の重点施策としてどのような事柄を打ち出しているだろうか。その施策に伴い、どのような「形」を整備しているだろうか。「形」に現われない施策は、「本気」ではないということだ。今一度考えなおし、どのような「形」をつくるか、考えてみよう。

(経営戦略考より)

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新入社員の指導にエルダー制度

情報源:日経産業新聞 2008.02.28【29面】

◆仕事を進めたいと思うなら、「誰が」「いつまでに」を明確に決めることだ。会社として取り組むべき仕事が進んでいない場合、「誰が」「いつまでに」があいまいであることが多い。

◆「誰が」「いつまでに」を含め、仕事を進めようとするのなら、いわゆる「5W2H」を明確に意識することが必要だ。企業にとって非常に大切な仕事である「人材育成」についても同様だ。

◆「誰が」「何を」「いつまでに」「なぜ」「どこで」「どのように」「どのレベルまで」といった具合に、「5W2H」を設定する
ことができる。

◆これをキチンとした制度として運用していけば、「あいまい」にせずに済む。そうすることで、「人材育成」という仕事を粛々と進めていく。

◆28日付けの日経産業新聞に、「自動車用樹脂部品大手のニフコ若手社員新入社員指導する『エルダー制度』を2008年度から本格導入する」という記事が掲載されている。

新入社員指導、すなわち「人材育成」の仕事を、若手社員の「エルダー」が行なうと決めたわけだ。これにより「誰が」が明確になるので、取り組みがしっかりとなされる。

◆記事によれば、「技術部門では以前から慣習として若手新人指導していたが、これを制度として確立する」のだという。「慣習」から「制度」への転換することで、「あいまい」さを排除することができる。


「誰が」をしっかりと決めること

●「エルダー制度」は、既に多くの企業が導入しているが、最近は先輩が後輩の面倒を見るのは当たり前だという「慣習」が薄れつつあるように思うので、これを「制度」化する必要性は、以前にも増して高まっているのかも知れない。

●この「エルダー」には、「入社4、5年程度の若手社員」が任命され、「新入社員に一人ずつ付く」という。エルダーは、自分自身の仕事を持ちながら、新入社員指導することになる。

●「エルダー制度」のメリットとしては、「年齢が近い人が指導することで相談しやすい環境を作る」ことや、「新入社員に教えることで(エルダー自身の)技能の定着を図る」、「管理職になる前に管理業務を学べる」といった点がある。

●社員への教育を考える際、「何を」教えるかが、議論の中心となりがちだ。しかし一方、「誰が」教えるのかも、さらに重要であったりする。「誰がやっても同じ」というわけにはいかない。

ニフコの「エルダー制度」では、新入社員に対する教育効果のみならず、教えるエルダーへの教育効果も視野に入れている。「誰が」の設定が賢く行なわれているわけだ。

●「誰が」が大切なのは、新入社員教育に限ったことではない。どのような新規事業に取り組むのか以上に、「誰に」新規事業を任せるかの方が、重要な意思決定であったりもする。

●「あれをやろう」「これをやろう」といったアイデアで社内の議論が盛り上がることは多いだろう。しかし肝心の「誰が」があいまい、あるいは不適切であれば、すべて「絵に画いた餅」に終わる。


教訓

あなたは経営者として、自社の課題の解決へ向けて、「何を」だけでなく「5W2H」をしっかりと意識しているだろうか。特に重要なのは「誰が」を明確かつ適切に決めることだ。「誰がやっても同じ」ではないし、「誰が」が決まっていなければ、何も変わることはない。

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省エネルギーを提案する電力会社

情報源:日本経済新聞(四国)2008.02.26【12面】

◆一流のアスリートともなると、「自分のライバルは自分」といった発言をするようになる。もはや匹敵する他者がいないとなれば、そのような境地に至るのだろう。

◆正確には、自分のライバルは「過去」の自分、と言った方がよいかも知れない。自分自身の記録を自ら塗り替えていくからだ。真の「自己実現」の姿がここにあるように思う。

◆企業もまた、同様だろう。競争環境の中、短期的には競合他社をライバルとして戦っているように見えるが、長期的には過去の自社の姿を常に塗り替えていく必要がある。

◆環境の変化に対応するには、そのような変革が不可欠となる。26日付けの日本経済新聞・地方経済面(四国)に掲載されている記事も、その事例の一つだ。

◆「四国電力が企業や官公庁に対する省エネルギーの提案件数を増やしている」という。省エネルギーを「節電」ととらえると、そのような提案は「本業の足を引っ張りかねない」取り組みだ。

◆しかし、あえてそのような提案をするようになったのは、「電力自由化への危機感があったからだ」そうだ。「過去の自社を塗り替える」という点では、極めて象徴的だ。

◆とは言え最近は、「原油価格の高騰二酸化炭素(CO2)削減などの環境意識の高まりを受け引き合いが増えている」という。これはむしろ、電力需要の増大につながるメリットがある。


高い次元へと自らを塗り替える

電力自由化による自家発電の普及、そして原油価格高騰による電力への回帰と、電力会社にとっては向かい風と追い風の両方を経験したことになる。

●極端に言えば、環境変化の波に翻弄されたということにもなるが、電力販売にとらわれず、もう一つ高い次元からみれば、ユーザの省コスト省エネルギーのニーズを満たすという点で、ビジネスの展開としては一貫している。

●長期的な戦略を考える上では、そのような「一貫性」を保てるかが、重要な評価基準となる。多少の環境変化では、あたふたしないような戦略だ。

●「長期的な戦略」と述べたが、正確には「事業ドメイン」と呼ぶ方が適切だろう。あるいは「ミッション」「ビジョン」と呼ばれることもある。いずれにしろ、それらは短期的にコロコロ変わってしまっては困る。

四国電力のサイトにあたってみると、「企業理念体系」のページに「常に、お客さまにとって最良の電気エネルギーを提供する」といった表現がある。

●一方、「よんでんグループビジョン」としてダウンロードできるファイルを見ると、グループミッションとして「・・エネルギーを中心として、人々の生活に関わる様々なサービスを・・」といった表現がみられる。

●また、電気事業を中核事業と位置付けつつも、「マルチユーティリティー企業」「総合エネルギー事業」「ソリューションサービス活動」といった表現もみられる。電力のみにこだわらないと共に、省エネルギー提案に積極的に取り組もうという姿勢が垣間見える。

●制定された時期の違いが表現の違いに反映しているのだろう。過去の自社を塗り替える様子がわかるようで、興味深い。塗り替えの方向性は、常に高い次元を目指すものであり、そうすることで、「一貫性」を保つことができる。

四国電力 → http://www.yonden.co.jp/index.htm


教訓

もしあなたの企業が環境変化の波に翻弄されていると感じるのなら、より高次元の存在を目指すことが必要な時期に来ているのかも知れない。そのためには、過去の自社を塗り替えることが必要だ。

(経営戦略考より)

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宿泊予約サイトが好調な滑り出し

情報源:日経MJ(流通新聞) 2008.02.25【9面】

◆売上を増やしていくには、既存顧客に新たな商品を売るか、既存商品を新たな顧客層に売るかを考えてみるのが手っとり早い。一般的には、前者の方が取り組みやすいと言われる。

◆そこで、品揃えを増やしていくことを考える。顧客視点から言えば、ワンストップですべての商品が揃うのは魅力的だ。かくして「総合的な品揃え」を志向するようになる。

◆しかし現実には、うまくいかないケースは多い。今の時代、「総合」は「強み」ではなく「弱み」だとされたりもする。一つのカテゴリに特化した「専門店」に勝てないからだ。

◆既存顧客の他のニーズを取り込むような商品を提供すれば、売上を増やせるはず。品揃えの不足は、売上の機会損失に違いない。そう考えて品揃えを増やし、失敗する。

◆自社としては「新たな品揃え」だが、既にその商品を扱っている店は存在する。彼らにとっても顧客にとっても、全く「新た」ではない。「新たな品揃え」だと言っているのは、自分たちだけだということに、気づかなければならない。

◆25日付けの日経MJ(流通新聞)に、近畿日本鉄道が運営する沿線情報サイトK’sPLAZAケーズプラザ)」についての記事が掲載されている。

◆このサイトのコンテンツ拡充の一環として、昨年3月に「近鉄沿線ぐるなびレストランガイド」を立ち上げたのに続き、「近鉄沿線宿泊e予約」を今月1日に開設し、「好調な滑り出しを見せている」という。

K’sPLAZA → http://www.kintetsu.co.jp/


機会損失に見えるのは錯覚

●近鉄が運営するケーズプラザは、「沿線の観光情報サイト『伊勢・鳥羽・志摩』や『奈良大和路』を独自に作り、サイトの内容を徐々に拡充してきた」という。

●このような沿線情報は、電鉄会社ならではの競争力を発揮することのできる分野だ。さらにこのサイトでは、路線検索やチケットの予約もできる。これも、電鉄会社のサイトなら競争力が高いはずだ。

●しかし近鉄によれば、「路線を検索しにきた利用者が、『食事場所や宿泊先を調べるため別のサイトへ行ってしまう』」ことが問題として認識されていたという。先述したような「機会損失」を感じていたわけだ。

●「別のサイトへ行ってしまう」人たちを逃さないためには「食事場所や宿泊先」の情報も提供する必要がある。つまり、「新たな品揃え」だ。しかし、自前でそれを行なう愚は犯さなかった。

●食事場所については「ぐるなび」、宿泊先については「近畿日本ツーリスト」「楽天トラベル」と組んだ。そうすることで、「一からサイトを作る手間やコストを省ける利点があり、サービス開始当初から充実した情報の提供が可能になった」。

●品揃えを拡充し、総合化しても、特化した専門店に勝つのは容易ではないのだ。近鉄沿線情報のように、自社が勝てる部分は自前で行ない、他の部分については、最も魅力的な専門事業者と提携するのが賢明だ。

●品揃えの拡充も含め、異なる分野に進出する場合は、競争優位性を確保できるかどうかの見極めが非常に重要となる。優位性がなければ、機会損失と見えるのは「錯覚」に過ぎないのだ。


教訓

あなたの企業では、品揃えの拡充や新商品・新規事業への進出にあたり、他社との比較優位性を十分に考えているだろうか。優位性がなければ、従来顧客に対する機会損失だと考えるのは錯覚に過ぎない。

(経営戦略考より)

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