経営戦略: 2008年2月アーカイブ

購入前にネットでシミュレーション

情報源:日本経済新聞 2007.12.19【35面】

◆起業にしろ、新規事業にしろ、何か物事を成し遂げるには、事前にその「イメージ」を明確に描くことが大切だ。イメージを描けないものは、まず実現できない。犬小屋一つ作るのでも、完成イメージを描かずに作業を行なうのは不可能だ。

イメージが描けていないと、行動もできない。イメージ、すなわちどうなれば良いのかがわからないのに、どうして行動することができようか。

◆明確な完成イメージを描くことは、行動の推進力となるし、少なくとも私自身について言えば、モチベーションの源となる。「こういう状況を作りたい!」という欲求の高まりは、イメージが明確であってこそだ。

◆部下に指示・命令を下す場合も、細かい具体的作業だけではなく、「完成イメージ」を併せて伝えておく必要がある。そのイメージを上司と部下が共有していて初めて、組織として仕事ができる。

◆「完成イメージ」は、出来る限り細かくブレイクダウンし、さらには「行動イメージ」にまで落とし込んでいく。「行動」もまた、「イメージ」が先行するわけだ。イメージできない行動は、実行することができない。「完成イメージ」と「行動イメージ」は、セットになる。

◆19日付けの日本経済新聞に、「化粧品や自動車、家具などをインターネットのシミュレーションを活用した上で、購入する人が増えている」という記事が掲載されている。

◆記事のタイトルは「『完成予想図』ネットで見極め」となっている。「完成予想図」を言い換えれば、「完成イメージ」だ。それを描くことが、商品の購買行動につながっていく。


完成イメージと行動イメージをセットにする

●記事で具体的に取り上げられているのは、化粧品・自動車・家具だ。「化粧品では似合う色を試し、自動車なら車体や内装の色を選んで『完成予想図』を確かめられ、間違いのない買い物ができる」という。

●化粧品なら、店頭で試供品を使う方法もあるが、顔に塗ってしまうので、いくつもは試せない。自動車のパーツも、わざわざ実際に取り付けるのは大変な手間だ。

●そこで、店頭のパソコンやネット上の画面でのシミュレーションが便利だというわけだ。このアイデア自体は、それこそ何十年も前から聞いたことがあるのだが、ようやく普及しつつある。

●記事によれば、このようなシミュレーションのサービスは非常に好評で、それにより商品を選び、実際の購入に結びついているという。販促効果は高いようだ。

●「完成イメージ」は「行動」、この場合は「購買行動」を促すのに効果があるというわけだ。育毛剤やダイエット用具などで「使用前」「使用後」を提示するのは広告の常套手段だが、それをもっと洗練し、現実的なものにした仕組みだと言えよう。

●顧客に商品の購入を勧め、購入方法を教えるのは、いわば「行動イメージ」を訴えかけるやり方だが、上述のように、それは「完成イメージ」とセットになって初めて購買行動につながる。

●「行動イメージ」を訴えかけるだけでも商品が売れるのは、顧客側が、自ら「完成イメージ」を描いているからに過ぎない。その部分を補完すれば、効果的に購買行動を促すことができるというわけだ。


教訓

あなたの企業では、商品を販促する際に、購買の「行動イメージ」だけでなく、「完成イメージ」を伝えているだろうか。顧客任せになりがちなその部分を補完すれば、販促効果がみられるはずだ。

(経営戦略考より)

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医療情報サイトが団塊世代向け雑誌を買収

情報源:日本経済新聞 2007.12.18【15面】

◆日本をはじめとして、世界の多くの国家の権力は立法・行政・司法の「三権分立」のシステムで成り立っている。それに加えて、マスコミを「第4の権力」と呼ぶことがある。

◆その呼び方について、いろいろな意見があるだろうが、要はマスコミの影響力は、非常に大きいということだ。情報を伝える強大なメディアを好き放題に使えるとすれば、それは大きなパワーになる。

◆メディアを押さえることが極めて重要であることは、たとえば反体制派が革命を起こすなら、まずは放送局を占拠するという行動に出ることからもわかる。

◆革命を例に挙げると穏やかではないのだが、お金をかけずに起業する「週末起業」のノウハウでも、まずは専門性の高い情報を発信することを推奨している。

◆ブログやメルマガを立ち上げることは、自分自身のメディアを持つことを意味する。インターネットの発展のおかげで、それが可能になったわけだ。ブログやメルマガが多数の読者を集めれば、そのパワーは、自分のビジネスを立ち上げるのに有利に働く。

◆18日付けの日本経済新聞に、「医療情報サイト運営のソネット・エムスリーが出版事業に進出する」という記事が掲載されている。具体的には、「団塊世代向けのファッション雑誌『Z(ジー)』」を買収し、「エムスリー・パブリッシング」という子会社を設立する。

エムスリーは、サイトの会員として多くの医師を抱えている。そのうちの「50-60歳代の主に開業医の会員(約2万人)に『Z』を配布する」という。ウェブサイトというメディアを既に保有しているが、それに加えて雑誌メディアも手に入れるというわけだ。

雑誌「Z」
m3.com


顧客ターゲットの「別の顔」に着目する

●「」という雑誌は、元々「50-60歳代の男性をターゲットとした総合雑誌で、ファッション、文化、旅行などの記事が中心」だという。現在の「発行部数は25,000部」だ。特に「医療」との接点が深いわけではない。

●しかし、「50-60歳代の男性」であれば、医師であろうとなかろうと、「」の読者層だ。特に富裕層向けのテイストを持つ雑誌なので、医師との相性はよさそうだ。

●「医師」には「医療従事者」という面もあるが、「富裕層」という側面もある。記事は「エムスリーはサイトで医師をターゲットにした金融商品や不動産などの広告も掲載して」いると伝えている。

●「医師」という顧客ターゲットの、「別の顔」に着目することで、新たなビジネスチャンスをつかんでいるわけだ。そのような視点のシフトは、他のターゲットでも考えられる。

●たとえば「母親」だからと言って、育児にだけ関心があるわけではない。「主婦」や「美しくありたい女性」という「顔」もある。育児関連企業が持つ母親顧客リストは、育児用品以外の商品を売ることにも活用できる。

エムスリーの場合、「医師」すなわち「富裕層」をサイト会員として抱え込み、医療情報という商品を販売している。併せて「医師」「富裕層」向け商品の広告も販売している。

●広告収入は、質が一定であれば、メディアの規模に比例する。ウェサイト以外の「雑誌」というメディアを加えれば、規模の拡大につながる。そうすれば、広告収入も増大する。そしてもちろん、メディアの持つパワーを利用して、さらなる「会員獲得に活用する」。

エムスリーがメディアを増やすにあたり、医療系雑誌を買収することはしていない。顧客層の「別の顔」に着目し、それに適合するメディアを選択したという点が、興味深い。

●医療関係市場のほかに、「富裕層」としての巨大な市場にアクセスするルートが、さらに拡大していく。「別の顔」に着目すれば、事業の柱を増やし、太くしていく戦略を展開できるわけだ。


教訓

あなたの企業がターゲットとする顧客は、どのような「別の顔」を持っているだろうか。その「別の顔」に着目すれば、さらなる収益源を発見できるかも知れない。早速、検討してみよう。

(経営戦略考より)

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人気あるメイン商品に付属させる

情報源:日経産業新聞 2007.12.13【18面】

以前、某ファミリーレストランでドライカレーならぬカレーピラフを注文したことがある。お腹が空いていたので、「大盛り」にして欲しいと頼んだが、断られた。

なぜ、できないのか。簡単なことではないか。しかし、そうはいかない。そのカレーピラフは、セントラルキッチンで調理され、ちょうど一人前ずつパック包装され、店に届けられていたのだ。

だから、「一人前」単位でしか注文を受けられない。「大盛り」となると、2パック目を開封しなければならず、残りは売り物にならなくなる。

世の中、便利になったようで、実はまだまだ不便な面がたくさんある。欲しい物を欲しい分だけ買うという、ごく当たり前のニーズが満たされない。

もちろん、不便になってしまったのは、セントラルキッチンでの調理のように、効率化やコストダウンを追求した結果だ。価格に反映するのなら、顧客にもメリットがある。だから、小さな不便が生じてしまうのは、ある程度は仕方がない。

しかし、「仕方がない」で済ませないことが、新たな商品やサービスを生む。13日付けの日経産業新聞に、松下電器産業が「車両後方の確認用カメラに小型モニターを組み合わせた」システムを発売するという記事が掲載されている。

記事によれば、「従来のカメラは高価なカーナビゲーションなどのモニターが必要だった」という。このシステムでは、39,900円と安価だ。カーナビはいらないが、後方確認カメラは欲しいという層のニーズをとらえる商品だ。

リヤビューモニターシステム GP-PD107
 

単体で売りにくいものの売り方

製品の機能を絞り込み、価格を大幅に下げる、あるいは全く新しい製品としてリリースするといったケースは、しばしば見られる。ソニーのウォークマンは、スピーカーと録音機能を削り、大成功を収めた。

今回のケースは、カーナビの付加機能としてのリヤビューモニターシステムを切り離し、独立した製品を生み出したことになる。ウォークマンのステレオ再生機能自体は、従来のカセットレコーダーの本来の機能であり、付加機能というわけではない。

特定機能を切り離すことでの新製品開発という見方ではない、別の観点もある。リヤビューモニターという製品が世の中に浸透していくプロセスとして見ることができるからだ。

私の知る限りでは、単体のリヤビューモニターは、以前から大型バスなどに取り付けられていた。しかし、一般に広く普及したわけではない。

そこへカーナビが登場したことで、そのモニター画面を活用するアイデアとして、リヤビューモニターが注目を集めるに至った。そこで単体でリヤビューモニターが欲しいという機運が盛り上がった。

上記は、多分に私の推測が含まれるので、正確ではないかも知れない。しかし、単体としてのリヤビューモニターのマーケティングを考えるとすれば、そのようなやり方も、理論的にはあり得る。

もちろん、最初から今回のように39,900円で販売すれば、単体でも売れていたかも知れないのだが、需要を喚起するという点では、やはりカーナビ版が先行したことの意味は大きいだろう。

単体で売りにくいものは、人気のあるメイン商品に付属させることで市場に認知・浸透させ、その上で、単体での販売に踏み切る。このパターンは、他の商品・サービスでも見られるやり方だ。


教訓

あなたの企業が提供する商品・サービスが、広く市場に認知され、
普及していかないとすれば、人気あるメイン商品に付属させること
を考えてみよう。市場がその価値を認めるようになれば、十分、単
体でも売れるようになるだろう。

(経営戦略考より)

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投票で結末が変わるケータイ小説

情報源:日経MJ(流通新聞) 2007.12.12【9面】

売り手と買い手との間の取引を「交渉」と呼ぶことがある。あたかも敵味方の対立関係にあるような表現だ。確かに価格を巡る対立が起こることは、しばしばある。

この商品をこの値段で買うのか、買わないのか。そのような商売のやり方もある。そこには「交渉」はない。その分、取引が成立する可能性を狭めてしまうことになる。

「交渉」においては、互いに歩み寄り、合意を形成する努力をする。結局のところ、決裂してしまうと互いに損だということを理解しているからだ。だからこそ商取引が成り立つ。

商取引の売り手と買い手は、敵味方の関係にあるのではない。よく言われることだが、Win - Win の関係になることを目指す。そのための「交渉」だ。

12日付けの日経MJ(流通新聞)に、「電子書籍サイト大手のパピレスは、携帯電話読者の投票結末が変わる小説配信を始めた」という記事が掲載されている。

読者参加型インタラクティブコンテンツ、と言うことができるだろう。書籍なら、定まったストーリーについて「読むのか、読まないのか」を迫るのが普通のスタイルだ。しかしこの場合、読者がストーリー形成に関与することになる。

「買うのか、買わないのか」ではない、一種の「交渉」が、ここに生まれていく。その分、「取引が成立する可能性」、つまり購入確率を高めていくことができるわけだ。

パピレス


心理的関与が深まっていく仕組みをつくる

この仕組みでは、連載される小説について、「最後に読者に2つの選択肢から1つを選んでもらい、投票数が多かった方の結末だけを公開する」のだという。

記事は「電子書籍では連載中から読者からの感想や批判が直接、サイトに寄せられる。こうした意見を取り入れて小説の内容を変えるのは電子書籍ならではの取り組みとみて実験的に導入した」としている。

おそらく、自分が好む結末でなくても、購入はされるだろう。だから、「交渉」結果と購入確率とが結びつくわけではないかも知れない。しかし、「交渉」のプロセスにおける心理的関与の影響は大きい。

記事は「読者の作品への愛着が増す効果も期待できる」と指摘している。「交渉」は敵味方の対立構造を想起させるが、「心理的関与」「愛着」となると、相手方を自分側に引き込む域にまで達している。

このパピレスの取り組みで興味深いのは、2通りある結末のうち、投票で選ばれたものだけを公開するという点だ。投票が終わってから結末が書かれるのではなく、2通りの結末が既に書かれた上で、片方だけが公開される。

公開されなかった結末は、いったいどうなっているのか。非常に気になるはずだ。読者は想像をかき立てられる。あちらこちらの掲示板やブログに「推理」が書かれることになりそうだ。「もう一つのエンディング」が話題になれば、作品のプロモーションにつながる。

結末の決定に参画するだけでなく、読み終わった後に至るまで関心を持続させる仕組みができているわけだ。「読むか、読まないか」の選択にとどまらず、「何を読みたいか」を考えさせる。

そしてさらには、「読めなかった」コンテンツの想像までもさせることで、心理的関与がどんどん深まっていく。顧客の「心をつかむ」、巧妙な仕組みだと言えるだろう。


教訓

あなたの企業では、顧客の自社商品・サービスへの心理的関与を深めていくために、どのような仕掛けを備えているだろうか。単純に「買うか、買わないか」を迫るだけではなく、心理的関与を深めていく仕掛けを考えてみよう。

(経営戦略考より)

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カタログで「エコ×」マークを表示

情報源:日経産業新聞 2007.12.11【15面】

◆先日、ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏が出演する映画「不都合な真実」を観た。地球温暖化問題への対策の必要性は、以前から理解していたつもりだが、映画の説得力あるプレゼンテーションは、かなりショッキングであった。

◆地球規模の深刻な問題に対して、自分一人ができることなど、たかが知れている。しかし、そう考えてはいけない。一人ひとりの積み重ねが、最終的には大きな結果を招くことになる。早速、買い物にはエコバッグを利用することにした。

◆個人の努力もさることながら、やはり影響力が大きいのは産業界の取り組みだ。個人としてできる効果的対策の一つは、消費者として産業界に圧力をかけていくことだろう。

◆11日付けの日経産業新聞には、コクヨの環境配慮への取り組みが紹介されている。「2008年版のカタログから、自社や公的な環境配慮基準に合致しない自社ブランド商品には『エコ×』マーを表示する」という。

◆環境配慮商品について「オススメ」表示をするケースはよくあるが、その逆をやるというのは、珍しいし、画期的だとすら言える。記事は「短期的には販売額の減少も予想される」と指摘している。

◆それに対してコクヨは「企業の社会的責任(CSR)の観点から実施に踏み切った」とコメントしている。2011年版のカタログでは、「エコ×」マーク商品が一掃されることを目指している。

◆特定の自社商品について、「買ってはいけない」というメッセージを自主的に発信する企業があるだろうか。タバコのパッケージに印刷されている注意書きにも似ているが、それは法的規制があるから表示しているのに過ぎない。


積極的に消費者の意識を変えていく

●セールスのテクニックとして、商品を購入することにより得られる便益を伝えるよりも、購入しないことで起こり得る問題を訴求した方が良い場合がある。

●人間が行動を起こす理由は、快感を得るか、苦痛から逃れるかのどちらかだと言われる。インパクトは後者の方が強い。快感とは異なり、苦痛を感じているのは異常な状態であり、まずはそれを解消しなければならないと考えるのが普通だ。

●環境配慮商品の「オススメ」表示を見て購入する場合、「地球にやさしいことをした」という快感が得られる。一方、「エコ×」マークの商品なら、購入時に心の痛みを感じるだろう。「オススメ」より「エコ×」の方が強烈なのだ。

●強烈な分、顧客の意識への働きかけも強い。しかし、そこまでやらなくてもよかったはずだ。CSRを果たすべく、環境配慮商品の比率を粛々と高めていくという方法もある。

●食品スーパーでのエコバッグ利用と同様、顧客の理解・協力が必要な取り組みについては、市場を啓蒙していく必要がある。インパクトあるメッセージを伝えることが大切だ。

●また、「エコ×」商品を排除することは、顧客の購買習慣を変えることを意味する。かつてコカ・コーラが味を変える試みに失敗したことがあった。「オススメ」表示くらいでは、簡単には変わらない。

●そう考えると、「エコ×」表示は、商品構成を変えていくための、ある意味「巧妙」な仕掛けだとも言える。もちろん、地球環境にとって良いことなので、文句を言う筋合いではないのだが。

CSRを進めていくには、社内努力だけでなく、市場を啓蒙していくことも含まれる。消費者の環境意識の高まりに対応することにとどまらず、積極的に消費者の意識を変えていくことを視野に入れておく必要がある。


教訓

あなたの企業では、どのような形でCSRを果たそうと考えているだろうか。顧客の理解・協力が必要なら、積極的に顧客の意識を変えていくことを考えよう。場合によっては、強烈なインパクトのあるメッセージを伝えていく必要があるかも知れない。

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相続コーディネートという新たな職能

情報源:日経MJ(流通新聞) 2007.12.09【1面】

新規事業立ち上げ起業の支援に取り組んできた。アイデアは一瞬で生まれることもあるが、実際のビジネスにしていくには、かなりの時間と労力がかかる。正直な実感だ。

◆一つのビジネスを立ち上げるには、あれもこれもやらなければならない。事業計画書よりも詳細な実行計画やチェックリストを作り、一つずつクリアしていく必要がある。煩雑だとも言えるだろう。

◆ビジネスがキャッシュを生むためには、その業務フローが完結しなくてはならない。一部分でも欠けていれば、キャッシュは生まれない。いろいろな観点で「選択と集中」を図るにしても、全体のフローは途切れさせるわけにいかない。

◆さらに事態を複雑にするのは、自分だけではなく、他者の力を借りなくてはならない場合だ。恐らく、狭い意味での自力だけでビジネスを立ち上げられるケースは、極めて稀だろう。折衝力も必要となる。

◆ビジネスの立ち上げには、プロデューサーやプロジェクト・マネジャーとしての能力が求められるわけだ。オーケストラの指揮者にも近いかも知れない。場合によっては、コーディネーターとしての役回りを担う。

◆もっとも、業務フローを完結させる必要があるのは、ビジネスの立ち上げだけに限らない。9日付けの日経MJ(流通新聞)には、「相続コーディネート」を行なう会社が紹介されている。

◆「『経済的にも精神的に価値ある相続』をモットー」とする「相続相談センター」という会社であり、「未開の領域で新たな“職能”を確立しつつある」と記事は紹介している。

相続相談センター


業務全体のキモを押さえる

●ビジネスの立ち上げもさることながら、相続についても、かなり煩雑な手続きや作業が必要になるという。まずは遺族間での分割をどうするかの協議を行なう。

●さらに、記事によれば、「分割協議がまとまると資産を評価して相続税の申告を行い、納税方法と納税資金の捻出方法を決定。相続した土地を登記して有効利用を実行に移す」という。

●それらのプロセスでは「弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など専門家の手が必要」となる。また、相続税を支払うキャッシュがなければ、不動産を売却しなければならないということにもなる。

●「相続相談センター」を設立した曽根恵子社長(51)は、元々は不動産業の経営者だ。相続に伴う不動産売却等の相談を受けたことが、このビジネスに着眼したきっかけだという。

●専門家を束ねる、相続に伴う業務全体のコーディネート役が必要であることに、曽根社長は気づいたわけだ。ビジネスの立ち上げ時もそうなのだが、「コーディネート業務」には、大きな価値がある。価値が高ければ、それ自体、ビジネスになる。

●何らかの「コーディネート業」は、新たなビジネスネタの候補となり得るわけだ。ただし、成功するためには、いくつかの条件があるだろう。曽根社長の場合、元々は不動産業を手がけていたことが有利に働いたとみられる。

●記事は「基礎控除額を超えて申告が必要なケースはほとんど不動産が絡み、相続ではそこが問題になりやすい」と指摘している。業務全体のキモとなる部分を押さえていることが、コーディネート業で成功するための条件になるだろう。

●「相続相談センター」は、顧客からコーディネート料を徴収するが、不動産が関われば、土地売買仲介料も収益になる。場合によっては、後者の金額は、前者を大きく上回る。

●物事が複雑になる一方で、利便性も求められる。そうなると、コーディネート役の存在価値は、ますます高まっていく。業務全体のキモを担っているのなら、コーディネート業に進出して成功する確率が高いはずだ。


教訓

あなたの企業が取り組んでいるビジネスを組み込んで、どのようなコーディネート業ができるか、考えてみよう。その役割を果たす者がいなくて、顧客は困っているかも知れない。自社が業務全体のキモを握っているのなら、ビジネス化を前向きに検討してみよう。

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医療機関向けの安価なホームページ

情報源:日経産業新聞 2007.12.06【11面】

◆業務を効率化するのなら、「標準化」の視点は欠かせない。いちいちその都度、何をどうやってすればよいのかを考えていたのでは、業務は全くはかどらない。

◆わが社でも、例えばメールの対応などは、標準化されたテンプレートをフル活用している。「いちいちその都度考える」のは、実は大変にコストがかかることなのだ。

◆このメルマガに関しては、毎号、内容を「いちいちその都度考える」のだが、周辺作業については、かなりの標準化がなされている。日経の記事を選ぶにあたっての作業方法、記事が決まってからの手順、誌面のレイアウトや発行作業と、標準化すべき部分はたくさんある。

標準化がされていないことが「コスト」要因になるとすれば、それは利益の圧迫要因であると共に、商品やサービスの売価を押し上げる要因にもなる。

◆逆に、標準化を進めることで、より安価かつ短納期で商品・サービスを提供することができるようになる。価格競争力と顧客満足度向上につながるとすれば、売り手も買い手も歓迎すべき取り組みだ。

◆6日付けの日経産業新聞に、「医療機関向けの安価な(ホームページの)作成サービス」についての記事が掲載されている。「病院の規模に応じて必要な情報メニューをパッケージ化」したものだ。

◆これもまた、「標準化」によるコストダウンの事例だ。北海道旭川市のホームページ制作会社「アイリンク」が「ホスピタルデザイン」という名称で始めたという。

ホスピタルデザイン


ベストプラクティスを標準化する

●このサービスでは、画面のデザインの自由度はあるが、「診療科目や受付時間」「医師のプロフィル」「交通アクセス」「スタッフ紹介」などがあらかじめ「メニュー設定」されている。

●対象となる病院の規模については、「単科の診療所」「複数科を持つ診療所」「総合病院」に分かれており、それぞれ料金設定がなされている。

●このサービスでは、規模に応じて、医療機関のホームページなら、まずたいていは備えているであろうページ構成が「標準化」の対象となっているわけだ。逆に言えば、閲覧者が得られると期待するであろう情報を、漏れなくカバーしているということだ。

●「標準化」は、少なくとも顧客視点での「期待」を満たすという観点で行なわれなければならない。その「期待」を満たしていなければ、「不満足」であり、さらに厳しく言えば「欠陥品」扱いされるだろう。

●「標準化」と言えば「効率化」が連想され、業務の担当者あるいは売り手視点になりがちだ。顧客視点を失った「標準化」は独りよがりで、意味のないものとなってしまう。

●企業の中で「標準化」という課題に取り組むことは多いだろう。その前提となるのは、対象となる作業に求められる機能、あるいは商品・サービスの価値、顧客からの期待をまず「標準化」することだ。

●「標準化」への取り組みの本質的な価値は、まさにそこにある。いわゆる「ベストプラクティス」を追求することだ。各業務や商品・サービスの「ベストプラクティス」を追求していけば、必然的に「標準化」が達成されることにもなる。


教訓

あなたの企業が取り組んでいる「標準化」は、顧客視点に立ったベストプラクティスを追求したものとなっているだろうか。その前に、「顧客からの期待」を正確に把握することができているだろうか。その観点で、今一度、自社の「標準化」を見直してみよう。

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本を旅立たせるブッククロッシング

情報源:日経MJ(流通新聞) 2007.12.05【16面】

◆インターネットの普及で、世界中の人たちとのコミュニケーションのハードルが非常に低くなった。さらにSNSの登場は、人と人とがつながることも面白さを実感することになった。

◆一方、ネット広告の市場が急拡大している。SNSのように、人がつながる、そして集まる場の価値もまた、急上昇だ。「つながる・集まる」コミュニティの形成は、ビジネスを成功させる条件としても重要だ。

◆「つながる・集まる」の重要性は、ネットもリアルも同様だ。それらを融合させた仕組みがあるとすれば、それもまた高い価値を持つに違いない。

◆5日付けの日経MJ(流通新聞)に、「ブッククロッシング」についての記事が掲載されている。聞いたことがあるだろうか。「気に入った本を街中に置き、ほかの人に自由に持ち帰って読んでもらう」活動だ。

◆読み終わった本を持ち寄り、自由に借り出していく取り組みは、以前から小規模で行なわれていたりする。大々的な活動は、米国で2001年3月に始まったという。この8月に、日本でも公式サイトがオープンしている。

◆単純に、本がいろいろな人の手に渡っていくだけではなく、ウェブサイトでそれを追跡できるというのが、この仕組みの面白いところだ。本という「わが子」を旅立たせる感覚を味わえる。

◆記事によれば、「韓国で放たれた本が英国、ドイツを経由して東京の江戸東京博物館に置かれていたこともある」という。こういう話を聞くと、自分も参加してみたくはならないだろうか。

ブッククロッシング・ジャパン


「つながる・集まる」で生まれる価値

●この仕組みでは、自分の本に「ブッククロッシングに参加中」と書かれたID番号付きのシールを貼り、どこかに放置する。日本には現在、公式の放置場所である「公式ブッククロッシングゾーン」が23ヶ所あるという。

●本を持ち帰った人は、それをサイトに申告する。感想を書き込むこともできる。そうすることで、本を放った人は、自分の本の行方などを知り、楽しむ。

●読みたい本がある場合は、サイトで検索し、放置場所を知ることができる。米国ではスターバックスが公式ゾーンになっている。本があることで、来店客増加につながるだろう。ネットとリアルの融合による「つながる・集まる」のビジネス貢献だ。

●非常に興味深い取り組みだが、書籍のこのような流通が無償で行なわれていくようになると、出版社としては、あまり面白くないかも知れない。また、本を持ち帰っても、サイトに登録せず、自分の所有物にしてしまう比率は、かなり高いようだ。

●しかし、「ブッククロッシング」の日本語サイトを立ち上げた財津正人氏(45)は、「広島県に住む出版社の営業代行会社社長」だそうだ。出版社側の立場にある人物と言える。

●記事によれば財津氏は、「昨今の活字離れを食い止める手段がないかと考えており、『これをきっかけに活字文化の楽しさが広まれば』」とコメントしている。

●確かに、「ブッククロッシング」が面白いとなれば、本に対する関心は高まるから、需要を刺激することになる。市場縮小が問題となっているのなら、ナントカの穴の小さいことを言っていても、始まらないのかもしれない。

●「つながる・集まる」で、スターバックスのような店への集客につながるのも悪くないが、やはり出版業界に大きく貢献してこそ、意義が大きいはずだ。

●私的に無償で流通するというのは、かつての音楽業界におけるナップスターが思い起こされる。結果として、定額制配信という新しいビジネスモデルが生まれた。書籍の販売も、新しいビジネスモデルの導入を検討しても良いのではないかと思う。


教訓

あなたの企業が取り組むビジネスに、「つながる・集まる」仕組みを導入することができないか、検討してみよう。その楽しさは人々を引き付け、重要を喚起することにつながるだろう。

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利用者を囲い込むタクシー業界

情報源:日本経済新聞(東京) 2007.12.04【15面】

◆製品を「プロダクト」と「コモディティ」という二つの概念で区分することがある。簡単に言うと、「プロダクト」は固有の技術で差別化された存在であるが、「コモディティ」は、そうではない。

◆英語の「コモディティ(Commodity)」が「商品」と訳される場合、いわゆる「商品取引市場」で扱われるものであることを指す。金属材料や未加工農産物など、重さで売買されるような商品だ。

◆同じ金1キロなら、等しく金1キロの価格がつく。そこに差別化の余地はない。もしその1キロの金を、市場価格よりも安く提供するのなら、買い手が殺到する。

◆つまり、コモディティの世界では、価格だけで市場が反応するわけだ。だから、価格競争にさらされている商品は、「プロダクト」ではなく「コモディティ」だと言うことになる。

◆時間の経過につれて、製品は市場に浸透し、次々と競合も登場する。そうなると、製品はプロダクトからコモディティ化していく。企業側としては、製品のコモディティ化を嫌い、プロダクトと呼び得る新たな製品を開発することに取り組む。

◆4日付けの日本経済新聞地方経済面(東京)に、首都圏でのタクシー運賃引き上げに関する記事が掲載されている。記事は「競争激化は続いたままで、生き残りに向けて、ほかとはひと味違ったサービスや工夫で、利用者を囲い込む動きが出始めた」と指摘している。

◆これは、コモディティ化していたタクシーのサービスを、プロダクト化しようする取り組みだと言えるだろう。価格値上げは利用者離れが懸念される。それ以上の魅力を打ち出そうというわけだ。


コモディティをプロダクトにする

●規制緩和により、タクシー会社により運賃に差がつくようになった。とは言え、利用者としては、多少の例外はあるにしても、自由にタクシー会社を選べるわけではない。列に並び、来たタクシーに乗るだけだ。

●このような「購買行動」は、まさに「コモディティ」的だと言えるだろう。金1キロが等しく金1キロであるのと同様、タクシー1台は、等しくタクシー1台なのだ。

●もちろん、乗ってから「しまった」と思うこともある。ドライバー道を知らなかったり、態度が悪かったりするからだ。ドライバー個人の資質という面もあるだろうが、私の経験では、タクシー会社間の格差は歴然として存在する。だから出来れば、タクシー会社を選びたいと思っている。

●記事の最後に、日本交通の川鍋一朗社長のコメントが紹介されている。「タクシーは拾う時代から選ぶ時代に入った」とのことだ。まさに我が意を得たりという感じだ。

コモディティは「拾われる」存在だ。どれでもいいから、手近なものを入手できればよい。プロダクトは「選ばれる」存在だ。「等しくタクシー1台」なのではない。

タクシー会社の具体的施策として、記事はまず、「携帯電話のメールで配車を受け付けるサービス」や「自動音声システム」を紹介している。電話がつながりやすいことや、スムーズに配車してもらえるという点が、差別化になっている。

●外国語ができるドライバーを登録したり、旅行会社と組んだ観光タクシー、「親子連れや子供一人でも利用できる『子育てタクシー』」といった例も紹介されている。これらも、「等しくタクシー1台」を超えた存在だ。

●同じ金1キロも、美術品に加工すれば「プロダクト」になる。同様に、コモディティ化していたタクシーのサービスも、加工することでプロダクト化できる。

コモディティ同士の競争で勝つ方法を考えていけば、結局は価格競争に陥らざるを得なくなる。そこから抜け出たいのなら、プロダクト化するという観点が必要となるわけだ。


教訓

あなたの企業が扱っている商品は、「コモディティ」だろうか、それとも「プロダクト」だろうか。当初は「プロダクト」だと思っていた商品も、現在は「コモディティ」になっているかも知れない。商品全体を見直して、「プロダクト」の比率を高めることを考えてみよう。

(経営戦略考より)

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ショッピングセンターに投票所

情報源:日経MJ(流通新聞) 2007.12.03【4面】

◆最近は、市役所などのホームページに民間企業のバナー広告を見かけることが多くなっている。自主財源の確保という名目で、ホームページ以外にも、自治体の発行する冊子や公用車両への広告出稿を受け付けていたりする。

◆規制緩和や民営化が進展していることを考えれば、一方でそのような取り組みも当然の流れなのだろう。「官」と「民」との間の壁は、かつてと比べれば、薄くなっているようにも思う。

◆両者が協力し合う取り組みについては、例えば「第三セクター」といった呼び方で知られている事業がある。「官」が第一、「民」が第二、両者の協業が「第三」というわけだ。

◆3日付けの日経MJ(流通新聞)に、「イオンは全国の自治体との連携を強める」という記事が掲載されている。「自社SC(ショッピングセンター)の利用を自治体に開放する方針を決めた」という。

◆これは、「政府が11月上旬、選挙の投票所の設置をSCなどにも認める見解を示したこと」が背景になる。選挙の投票と言えば、地元の小学校で行なうというイメージがあるから、SC投票というのは、おもしろい。

イオンにとっては集客向上にもつながる施策と言えるが、むしろ投票率の向上に役立つであろうことが期待されているそうだ。「投票ついでに買い物」よりも、「買い物ついでに投票」の効果の方が高いだろう。

SCは地元住民に密着した存在だ。買い物も投票もそこで行なうということについては、あまり違和感はない。イオンにしてみれば、地元へのちょっとした貢献だから、良い取り組みだと思う。


公共の存在になることを目指す

●記事によれば、イオンの狙いは「公共スペースとしての存在を地域にアピールする」ことだ。地域での存在価値をアピールし、地元では「なくてはならない存在」になる。

●企業が戦略を考える上では、必然的に自社の「存在価値」に意識を向けることになる。「もし明日、この会社がなくなったとしたら、いったい誰が困るだろうか」

●その「困り度合」とでも言うべきものが、その企業の「存在価値」を示す尺度となるだろう。場合によっては、困るのはその会社の社長と社員だけなのかも知れない。

●もっとも、「存在価値」が高ければ安泰だというわけではない。先日、大きな話題となった英会話学校の倒産のおかげで、たくさんの生徒が困ることになってしまった。

●一般的に、企業規模が大きくなればなるほど、「なくなったら困る」という意味での「存在価値」は大きくなっていく。その分、責任も大きい。広く一般社会に与える影響の大きさが「存在価値」だとも言えるだろう。

●その行き着く先、究極の状態を示すキーワードが「公共」だということになるだろう。民間企業でも、電気・ガス、あるいは交通機関・通信といった事業を行なう会社は「公共性」が高い存在だ。

●そのような企業には、公共性が高いがゆえに、法律的な規制もかかったりするが、経営基盤としては確固たるものがある。世の中における「存在価値」を追求すれば、「公共」の存在になることが、一つの必然的な目標となるのだろう。


教訓

もしあなたの企業が、明日なくなってしまったら、誰がどれだけ困るだろうか。その「困り度合」があなたの企業の「存在価値」だ。どうせなら、「公共の存在」となることを目指そう。

(経営戦略考より)

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