日本経済への最後の警告(単行本) ジョン・ケネス・ガルブレイス (著), 門間 隆 (翻訳)
いま、日本の指導者に求められるものは何なのでしょうか? 日本人に必要なものは何なのでしょうか? 経済学の巨人ガルブレイスが、ケインズ経済学とニューディール政策の歴史を辿りながら、日本経済再生へ向け叡智を語ります。
【1】
経済学の景気循環論は、経済はどんなに悪い状態に落ち込んでも、必ず回復に向かうと言う。しかし日本は現在、10年どころか20年不況に見舞われそうだ。倒産件数や失業者も日増しに激増している。
こうした現実を目の当たりにして、日本人が絶望的な気持ちになり、自信と誇りを傷つけられ、アイデンティティの喪失感に直面しても無理はない。だがそれでは困る。日本は世界を牽引する優秀な国家だったのだ。
そんな国が萎縮したままでは、グローバル社会全体がパニックになり、暴走を引き起こしかねない。今こそ底力を発揮して、まず日本を立て直し、一気に世界経済を活性化、反転、成長させる原動力となるべきだ。
日本にはその力がある。日本が自信と覇気を喪失してしまったのは、政府指導者の仕業だ。彼らはミクロ的な視野でしかものを見ていない。マクロ的な長期にわたる将来展望や、信念、理想を欠いている。
【2】
現在、アメリカも日本も、ケインズ経済学は「百害あって一理なし」という感じになっている。それは、レーガンの金持ち重視の経済学の影響だ。だが、それは失敗に終わり、双子の赤字を残した。
日本も、政府支出の増大や、国有企業の肥大化、官僚機構の無駄遣いなど「大きな政府」のマイナス面に悩まされていた。そのため、「小さな政府」は日本の指導者にも受け入れられたのだ。
そして彼らは「自由放任主義こそ真の国家のあるべき姿だ」と勘違いし、なすべきときにも何もしなかった。バブルの後がいい例だ。小泉首相も同じ過ちを繰り返そうとしている。
政府が、本当にやらなければならないことは、国民に「政府は我々を失業と倒産の恐怖から救い出し、かつての反映と栄光を取り戻すために決然として行動している」という確信を与えることだ。
【3】
「構造改革なくして景気回復なし」と高らかに宣言する小泉内閣がスタートしてから一年以上が経ったが、一向に景気は回復しない。だからといって、ここで改革の手を緩めるわけにはいかない。そうすれば、永遠に立ち直る機会を失う。
最大の問題は、何のための構造改革か?という根源的な疑問に対する理念や哲学が政府から国民に明示されないことだ。議論は「改革か景気か」という目先の議論に矮小化されている。
いつの時代、どこの国でも「個人の自由」と「公共の福祉」のバランスをどうとるかという大命題をめぐって格闘し続けた。ところが首相は痛みを分かち合おうと呼びかけて、痛みばかりを押し付ける。
ここには、先哲たちの経済をめぐる血みどろの論争や葛藤、理念、哲学に関する真摯な姿勢、理解が欠如している。彼らが命がけで構築しようとしたインフラを再検証し、その叡智を凝縮すべきときだ。その確固たる土台の上に立って、はじめて日本モデルが構築できる。
【4】
国際社会からは「日本はもっと金を使って経済を活性化しろ。政府はカネを借りてでも公共投資をして有効需要の拡大をしろ」と批判されている。
しかし、そんな原則を振りかざされても、エンジンはかからない。なぜなら日本人はすでに欲しいものをすべて手に入れたからだ。不況でも日本人は生活に満足している。これが消費停滞最大の要因だ。
ただ、公共投資と言っても、列島改造論のときのような土木工事や巨大建造物だけではない。社会保障や教育、国際平和などいろいろある。これからは、こうした分野に絞って投資すべきだ。
特に日本が投入すべき社会的インフラは、教育だ。世界は人材開発競争の時代に突入している。こうした面で遅れると国家としての将来的展望など全く開けなくなる。
【5】
小泉首相は「構造改革なくして景気回復なし」と絶叫しているが、本当に拙速な構造改革が必要だろうか? 日本国民が政治を信じて、膨大な貯蓄を有効需要に回せば、10年不況など雲散霧消する。
ここ10年間、日本の企業の金融資産はどんどん減ったが、個人資産は増えている。10年間で40%もふえて1400兆円になった。畳の下に死蔵している金だけでも700兆円あるというから恐ろしい。
そのうちの1%が株式市場に回れば、たちまち株価は上昇する。銀行は豊かになり、貸し渋りが無くなれば、企業は資金調達するようになる。
だが国民が政府を信用しなければ、退蔵金は永遠に有効需要、生きた金になることはない。要は政治不信の徹底的払拭なのである。それさえ実現できれば意外に早く日本を覆う陰鬱な雲は晴れるはずだ。
<コメント>
ケインズに学び、フランクリン・ルーズベルト、ジョン・F・ケネディ両政権を助けた20世紀経済の生き証人ガルブレイスが、低迷から脱せずに苦しむ日本へのメッセージを記した書です。
書の中で、著者は小泉首相の改革について批判しています。実は私の場合、改革をコンサルティングの現場で経験してきました。コンサルタントとして、会社の改革のために雇われるのです。
その成功に求められるものは、国政でも会社経営でも同じではないでしょうか? すなわち、まずトップが「本当に変わりたい」と思うこと、次にトップが「それは必ずできる」と確信することです。
トップが確信を持つと、従業員もそれを確信し始めます。確信があれば努力や工夫をします。顧客の声に耳を傾け、工夫します。すると規模、技術、経験の不足を補えます。
では、今の日本で、為政者は本当に明るい未来を確信していると言えるでしょうか? そうでなければ、どうして国民が日本に明るい未来を確信できるというのでしょうか?
とまあ、政府の批判ばかりしていても仕方ありませんので、私は私のやり方でやってます。この場でも、何度も言いました起業家の輩出です。
ガルブレイス氏も、教育の重要性に触れていましたが、私は中でも起業家教育が急務だと思っています。次世代を担う子供たちはもちろん、まだまだ現役のビジネスパーソンに向けた教育も必要です。
多くの会社が、従業員を抱えきれなくなっています。しかしこれまで日本のビジネスパーソンは、退職まで企業にいるための教育をうけてきました。
一人で会社を飛び出して、生きていくための教育など誰からも受けてないのです。だから今、それが必要です。
日本が、自分のやりたい分野で、ご家族と一緒にビジネスを楽しむ、起業家であふれる社会になったら、どんなにすばらしいでしょう。そんな日本なら到来が楽しみです。
そんなことではじめたのが「週末起業」です。
→ http://www.kfujii.com/sks06.htm
「お知らせ」でお伝えしたように、マスコミに注目いただいているのも、そんなところにご注目いただいている面があるようです。
まだまだ小さな活動で、ボランティアの域を出ません。でもきっと大きなムーブメントになるでしょう。「起業家で一杯の日本を見てみたい」そういう気持ちがあるからこそがんばれるのです。
こうして日本経済に活力を与えられれば、きっとこの国の行く末も明るいものになるはずです。皆さんはどう思われますか?
(ビジネス選書&サマリーより)
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