会社を変える「日本式」最強の法則―創造的な企業体質への変革! (単行本) 柴田 昌治 (著)
組織の生産性は、リストラやIT導入だけでは向上しないとして、その根底にある風土・体質の変革を唱えた1冊。風土・体質からくる「組織の負の論理」に着目し、それがいかに生産性を低下させているかを、多数の事例とともに浮き彫りにする。
【1】
今、企業にとってオフィスワーカーの生産性は最も重要な課題だ。これまで量的拡大経営に走ってきた日本企業は、これを片隅に追いやり、省みることが無かった。
ところが低成長時代の到来が、経営の基本方針を「質を問う経営」へ転換することを求めている。これをうけ90年代の日本企業はそれなりにリストラによる人員削減や業務改革の努力をしてきた。
しかし、いくら制度やシステムなどハードの改革を行っても、問題は解決しない。その証拠に、一方通行の会議、皆でなんとなく決める意思決定、成果をあげない研究開発などが相変わらず健在である。
こうして労働生産性は主要先進国のなかで最下位になった。オフィスワーカーの生産性が低いのは、組織の論理を優先する仕事の仕方、つまり組織の風土・体質そのものが問題なのだ。
【2】
組織には、非生産的なことがたくさんある。例えば「その話でしたら、窓口を通してください」という言い方が、日常的にされている。また会社の利益と無関係だが、保身のためにやっている仕事もある。
悪いことに皆が「仕事とはこんなものだ」と思っているから、こうした「壁」や「保険仕事」は、部分的に改善しても、いつの間にか元通りになってしまう。
これをなくすことは、簡単ではない。例えば「保険仕事」は、やらないと自分が損をする。正直者は馬鹿を見るのだ。
そうならないように評価制度を変えればよいというが、制度を変えても、頭が切り替わらなければ、仕事のスタイルは変わらない。結局、制度の運用のほうがうまくいかなくなるのが常だ。
「保険仕事」や「壁」の排除には、これを生み出している、企業の体質そのものを変えるしかないのだ。
【3】
従来のオフィスワーカーの生産性向上の試みの多くは失敗してきた。例えば改善委員会のようなものを作ることが多いが、その最終目的は、いつの間にか経営者への提言になる。しかし問題の多くはトップが方針として掲げただけでは解決しない。
さらにこうした運動は、社員間にやらせる側と、やらされる側という対立を生む。気付くと「運動は推進室の仕事」となってしまう。
そして、やらされる側は「推進室の人間がどこまでやれるかお手並み拝見」と言う高みの見物で臨む。
やらせる側は、自分達の評価に関わるので強引になる。そして見栄えのいい成果を作り上げて報告を競い合うようになる。中には虚偽に近い報告もでてきて実態とかけはなれてくる。
これが社員の会社に対する不信感を生む。こうして企業の求心力は、どんどん下がっていく。
【4】
「会社のため」という強い思いを多くの社員が共有できた時代は、終わった。しかし「知恵と創造性が発揮できる会社が作りたい」という意志を持つものは、少なからずいるものだ。
しかし普通はそんなそぶりも見せずに過ごす人が多い。だから周りに同じ思いを持つ人がいることに気づかず「自分ひとりが言ってもしかたないな」とあきらめているケースが多い。
こうした人たちが、その「思い」を共有してネットワークすれば変革の流れになる。こうしたやる気のある人間、自分が何とかしなければ、という思いを持った人間を結びつけるのだ。
人は、明らかに正しいことでもやれば自分が不利になると思えば動かない。だが「誰かが助けてくれる、孤立しない」と思えれば正しいことをする。こうした期待感を持てるネットワークが必要だ。
従来の日本企業には、このようなコンセプトは不要であった。だが社員の連帯感が弱くなった今、こうした思いを自主的、自覚的な動きにつなげていく考え方が、ぜひとも必要なのだ。
【5】
こうしたインフォーマルネットワークは、戦後の日本企業が内にもち、日本経済の大躍進を支えた日本的な強さの源泉そのものだ。もともと日本企業には、共同体的な人間関係の強さがあった。
それは社内で行われていた様々な行事や、会社帰りの一杯のような業務外の活動のことだ。ここで仕事ではうかがい知れないことを、互いに、自然に持ち合える環境が作られていた。こうして皆が当たり前のように「会社のため」と言う価値観を共有した。
しかし低成長時代になり赤字転落する会社が続出、リストラが当たり前のようになった今、これは薄れた。そして次第に損か得かと言う基準が幅を聞かせるようになり、社内の人間関係も希薄になった。
こうして日本企業の発展を支えてきた思いや、志を持ったネットワークは風前のともし火になった。今日、日本企業の再生に必要なのはこの日本独特のネットワークを、意図的に作り出すことだ。
<コメント>
本書は、「組織の負の論理」に着目し、それがいかに生産性を低下させるかを多数の事例とともに提示しています。そしてこの悪弊を克服するために、社員の自発的な変革のエネルギーを統合する必要があると提唱します。
その担い手は、優秀な「コア」社員です。「会社を良くしたい」という、いわば草の根的な思いをフォーマルな変革へと導くのです。
これを読みながら、私の頭を駆け巡っていたのは、ご存知プロジェクトXの数々のシーンです。読みながら、中島みゆきの歌と田口トモロヲのナレーションが頭の中をぐるぐる巡っていました。
私などは、性格がひねくれているので「24時間営業と言われた日本のビジネスマンも、今や8時過ぎのこの番組を見ているのか」などと、変なところで感心してしまいます。
そして「どうしてここまで会社のために」などとうっかり口走ります。すると少し上の世代の人に「彼らは会社のためではなく、自分のためにやったのだ!」などとムキになって言い返されます。そういう人はうっとうしいと思いつつ、うらやましかったりもします。
私のクライアントの経営者の多くが、社員の士気を高めることに腐心します。しかし意外にこの点には無神経な方が多いようです。
「社員が一生懸命やらなくて」とぼやく経営者に「では一生懸命やると社員は何が得られるのですか?」と聞くと、返ってくる答えは、報酬、昇進、周囲からの称賛などです。
もちろんご褒美は大切です。しかし彼らが、仕事をやることそのものに、ご褒美以上の価値を感じることはもっと重要です。つまり誇り、やりがいを感じてもらうことが、ご褒美より大事なのです。
(ビジネス選書&サマリーより)
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