環境技術を軸に経済の再編成を

Eric Janszen氏は、近く刊行される著書において、米国経済が経験することになるという、痛みを伴う構造改革について論じている。

住宅ローン問題と経済危機による犠牲者が増え続けるなか、多くの経済学者たちの頭にある疑問は、景気後退が起こるかどうかではなく、景気後退がどこまで深刻になり、どのくらい続くのかということだ。しかしEric Janszen氏は、金融業界がすぐに活況を取り戻すとは思えないとして、米国経済を立て直す堅固な地盤は他の場所に求める必要があると言う。

Eric Janszen氏は著名なエンジェル投資家で、逆張り投資ウェブサイト『iTulip.com 』の創設者だ。同サイトは、(2000年のネット)バブルがはじけることを正確に予測したと『New York Times』誌が評価したサイトでもある。

Janszen氏は、米国経済は現在、「金融、保険、不動産」という従来の基盤から離れ、抜本的な再構築を必要としていると考えている。同氏の唱える処方箋は、環境関連技術に基づく新たなバブルを起こすということだ。

2月に『Harper's Magazine』誌に掲載され、幅広い議論を呼んだ記事『次なるバブル:今後の市場崩壊にいかに備えるか』のなかでJanszen氏は、住宅バブルによる損失を穴埋めするのに充分な「仮想的な価値」(fictitious value)を創出できるのは、一時的にせよ環境関連技術が唯一の分野だと主張している。

環境関連技術について、懐疑的ではないが推進派でもないJanszen氏は、「現在の経済状況を考えると、新たなバブルの発生よりも悪いのはただ1つ、バブルが起こらないことだ」と記している。

Wired.comとのインタビューでJanszen氏は、米国の経済状況のほか、石油に関税をかけて代替エネルギー開発費用をまかなうという同氏の計画、光ファイバー・ケーブルを各家庭にまでつなぐことが優れたエネルギー政策になることなどについて語ってくれた。

ワイアード・ニュース(以下WN):あなたは、環境関連技術に焦点を合わせながらも、米国経済について幅広く論じ、米国経済が金融業界に依存していることについて論じておられます。現在の経済は、どのようにバブルがベースになっているのでしょうか?

Eric Janszen氏(以下敬称略):手短かにお答えすると、われわれは1995年から始まった一連の資産価格バブルをくぐり抜けてきました。実のところ、一連のバブルを引き起こしたのは、1990年代初頭の景気後退から回復を図るために、連邦政府が米国の金融制度に施したいくつかの変更でした。その政策が、インターネットと不動産という2つのバブルを支える資金拡大の始まりを促したのです。

WN:そしてあなたは、次のステップとなるのが、20兆ドルという仮想的な資産を創出する可能性を持つ環境関連技術だ、とおっしゃっていますね。

Janszen氏:それは実際にはバブルではありません。私はそれを、現在の経済の仕組みと金融市場の機能(の仕方)を正当な形で利用するものだと考えています。

Harper'sの記事のタイトルについては、「The Good Bubble」(良いバブル)という別の案もありました。Harper'sの編集者は、この記事をできるだけ議論を呼ぶものにしたかったのです。

環境関連技術は、資本をきわめて効率的に利用する方法になる可能性があります。近く刊行される私の本では、「FIRE」(finance、insurance、real estate:金融、保険、不動産)経済が急激に衰退するという時期に、米国がどのように突入していくか、という問題について詳しく論じています。古い形での復興は不可能だということが、1年程度の間にきわめて明白になっていくでしょう。

これから必要となるのは、長期的な、しかもこれまでと比べて多少痛みを伴う、経済の構造改革です。

WN:あなたがおっしゃっているのは、どのような種類の構造改革なのですか?

Janszen氏:経済刺激策としての国債による資金調達への依存を減らすことです。この7年にわたり、創出されたすべての新しい事業が、公共と民間の分野において180万ドルの負債をもたらしています。どう見てもこれは持続可能ではありません。あまりにも非効率的です。

国内総生産(GDP)を1ドル伸ばすために、これまで新たな負債がおよそ50セント必要でした。いまや、GDPを1ドル拡大するのに9ドルの負債が必要という状態になっています。

WN:今後、米国経済はどの程度悪くなると思いますか?

Janszen氏:誰もが驚くようなことになるでしょう。住宅ローン問題が米国の信用制度に与えた影響は、やっと実感を伴うようになり始めたところです。

環境関連技術分野に出資するための協調的な取り組みがないため、どの業界や分野が米国を景気後退から引き上げてくれるのか、まだはっきりとは分かりません。

今後どうなりそうかと言うと、政治家がこの状況を分析し、「人々に取り組んでもらうには、これからどうしたらいいのか?」と問いかけることになるでしょう。経済の1つの分野に焦点を合わせることによって、米国を景気後退から脱出させられるのです。

WN:ヘルスケアやバイオテクノロジーなど、それを実行するのに見込みのある分野をいくつか挙げながらも、さほど期待できないとあなたは述べておられます。なぜクリーン技術はそれらと異なるのでしょうか?

Janszen氏:代替エネルギーとインフラは、拡大可能で政治的に都合のいい唯一の経済分野なのです。私が言っているインフラとは経済用語としてのもので、道路、橋、通信、エネルギーなどを指します。

WN:Harper'sの記事では、二酸化炭素の排出、人間の活動に起因するる地球温暖化、環境について、一言も触れていませんね。環境問題の現実から、代替エネルギーの必要性があるとお考えですか? それとも経済や政治がこうした環境分野への出資を促進するのでしょうか?

Janszen氏:今後も大型車を運転できるようオイルサンド[日本語版編集部注:粘性の高い油分を含む砂岩]の採掘を続けていくと、どんな結果になるかを考えれば、そんな事態を防ぐためにできることなら何でもやろうというのが私の思いです。

第一にやらなければならないことは、環境の保全です。本物の政治的リーダーシップとは、短期的な利益よりも長期的な利益を優先して物事を決めることです。環境について考えるというのは、明らかに長期的な利益に関わることです。

WN:バブルを拡大せずに、代替エネルギーを推進するエネルギー政策を立てることは可能でしょうか?

Janszen氏:もちろんです。投機的なバブルに出資する構造全体を変える必要があるのです。そうすれば、本来果たすべき機能を果たす市場に回帰させることができます。資本もはるかにリスク回避的になるでしょう。

WN:バブルを引き起こすことなくクリーン技術への出資に必要な数兆ドルを捻出する初期の資金調達や信用創出の手段として、どのようなものを考えていますか?

Janszen氏:1つの方法は、石油に変動関税をかけ、価格を1バレルあたり200ドルか300ドル程度まで徐々に引き上げることです。少しずつ引き上げる限り、経済はそれに対応可能です。これこそ米国の経済システムの長所なのです。これまでも、20ドルから100ドルまでの上昇に、非常に落ち着いた対応をしてきました。経済は破綻していません。減速していることは確かですが、経済がボロボロになっているわけではないのです。経済を破綻させることなく、比較的痛みを和らげながらも、徐々に数多くの変化を遂げざるをえないようなプロセスを作り出すことは可能です。

WN:こうした移行の一環として、どんな種類のインフラが変化することになりますか?

Janszen氏:輸送システムです。資本集約的な大型の取り組みとなるのは高速鉄道です。成果を引き出すには、政府が積極的に関与してまとめていく必要があります。

また私は、政府から十分な資金を得られ、かつ民間企業のように株主に対する責任を負う、官民企業を提案しています。市場のメカニズムが働くため、計画が何年も遅れるとか、予算が数百億ドルも超過するとかいった事態にはなりません。

もう1つはエネルギー・インフラです。いまも石炭を大量に使う古いシステムが残っています。私が提案するのは原子力発電を増やすことですが、新しいペブルベッド炉を建設するというものです。

通信も改革の大きな要素です。高いレベルの目標が米国経済におけるエネルギー需要を抑制することなら、光ファイバー・ケーブルを各家庭に引くべきではないでしょうか? これにより、人々は通勤しなくても済むようになっていくでしょう。

構造改革は、包括的で、よく考えられた計画でなければなりません。なんとしてでも、エネルギーの使用を減らさなければならないのです。

(WIRED NEWSより)

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このページは、が2008年5月 6日 07:51に書いたブログ記事です。

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