二十一世紀日本はこう変わっていく (単行本) 牧野 昇 (著)

<コメント>
著者の言うように、日本の不況は本当の不況を知らない国民の甘えた精神構造に立脚している面がある。

例えば、フランスのワインは相変わらず日本人に買われているし、町に失業者があふれるわけでもない。新車を買びかえたという話は聞くが、手持ちの金がなくてやむなく車を手放し、公共料金の支払いに充てたという話も効かない。本当の不況ならそこまでいくのが世界の常識だ。

私はこれを、便乗不況と呼ぶ。その構造はこうだ。

例えば、経営者は不況と騒いで、自分の経営手腕の不足を棚に上げ、景気対策という名の税金たれ流しを国にねだる。一方で、悲観論に便乗し、リストラという名の首切りを断行する。

マスコミは、世の中こんなに不況だと騒いで、記事を売る。不況記事や、他の会社のリストラ記事のほうが、景気回復記事よりも断然「売れる」からだ。

その影響で、市民は将来にますます不安を抱き、財布の紐をさらに硬くする。そして不況の傷をますます広げていく。

深刻なのは、この不況騒ぎのドサクサで有能な人材が路頭に迷ったり、教育や研究開発など、将来への投資が行われなくなることだ。長期的に考えるとこちらの影響のほうがずっと大きな問題になりそうだ。

<本 文>

【1】経済(1)

現在の日本は、不況だと誰もが言う。経済成長は止まり、財政赤字は急増し、経営者も国民も自信をなくした。しかし、日本経済の現況を見れば、GDP貯蓄失業率など、経済指標の多くが他の先進国に比べてもトップクラスである。

そのハイレベルの中での不況であるという認識が必要である。そのためにも、まずは、悲観論を改めるべきだ。

いずれにしても、日本の経済は21世紀には成熟し、経済成長率は1%台になるのだ。ただし、その実体そのものは大きいので、増加額は巨大になる。

また、21世紀も社会のデジタル化はいっそう展開されるだろう。90年代は、社会が情報化社会に移行した時代であった。米国では、情報化への投資が国の長期繁栄を支える基盤となった。

【2】経済(2)

21世紀には、資源集約型労働集約型などの伝統産業は日本を離れていく。一方で、知識集約型ビジネス専門サービス業などが成長する企業の典型となる。また、これまで企業の寿命は30年と言われてきたが、これは20年となるだろう。

このような21世紀を生きていく企業は、起動性とか、スピードが優れた企業だ。なかでも、二ッチ専門分野を特定し、特殊技術でそこのトップか二位を占める二ッチトップ企業だ。

なお、日本経済そのものはは、デフレ化が進み、所有せずに、利用することのほうがメリットがあることを明らかにする。また、成熟化が進むので1次使用でなく「2次使用を狙ったマーケット」が拡大する。

金融の分野では、さらにビックバンが進み、マネービジネスが主流となる。そのため、数理工学などを駆使した金融知能の必要性が増す一方で、統計には出てこない闇の経済、地下経済が拡大する。

【3】経営(1)

失業者が増大するなか、年功序列終身雇用などの日本型雇用システムは、岐路に立っている。これに伴い、確定拠出型年金の401Kプランやリスクの高いマネー運用など、退職金や年金制度も急速に様変わりする。

米国からは、新しい経営手法がやってきた。例えば、サプライチェーンマネジメントEVA経営や、境界のない交流自由なバーチャル組織が企業経営の有力なコンセプトになりつつある。そして、アウトソーシングがあらゆる分野に浸透する。

なお米国では、情報技術への大胆な投資が繁栄をもたらしている。特に通信技術の進歩とインターネットがビジネス機会を拡大し、変質させた。

ただし、インターネット株高騰の状態には問題がある。企業経営の目標は、付加価値を高めることであり、単なる株の売買という投機のような行為は、何も生みださず、近い将来危機を招くはずだ。

【4】経営(2)

真のグローバル化は、我々が海外への進出するだけでなく、海外からの調達も重要である。つまり資本の呼び込みとか、外国人労働者の移入などヒトモノカネ技術ノウハウを海外に移しても違和感のない企業が必要となる。

まずは、外資系企業に学ぶことだ。外資系企業の母国本社を見習うことは、エクセレントカンパニーの理想的な事例を学ぶことだ。また外国企業の日本法人からは、日本のカルチャーとぶつかっているところから、日本企業の特殊性や欠点を学ぶのだ。

なお、21世紀デジタル社会においては、企業の資産は人間の脳となり、脳の動きがキーになる。まず、経営者の仕事は、人事と決断である。ヒトの選択と、決断だけは、他人に任せてはいけないのだ。

また、ビジネスマン成功の要因は、IQの高さでなく、EQになる。つまり、自己認識に優れ、制御が効いて、他人の気持ちが推察でき、強調的かつ意欲的な人格が成功に大きな影響を及ぼしている。

なお、ビジネスマンの転職傾向は強まっている。経営者も終身雇用制の維持が困難になっているので、この傾向は強まる一方だろう。これに伴い、人生の成功には、転職に重要な評判、履歴書、人脈の3つが重要事になるだろう。

【5】社会(1)

日本の人口は、50年後に9000万人と現在の6割になると予想されている。うち2000万人が75歳以上になる。年金制度の崩壊が懸念される。

ただし、高齢化への対応は、比較的簡単だ。高齢の定義を引き上げればいいのだ。つまり、定年を70歳にするとか、年金支給額を遅らせるのだ。一方、少子化への対応は難しい。現実的には、移民の受け入れしか対応方法がなさそうである。

なお、高齢化を個人の立場で考えると、働く期間は約50年ある。この間の段階別ライフプランを立てなければならない。その際には、自立していく方向に移らざるを得ない。これまでは、会社任せであった個人の資産の運用もこれからは、自己責任になり、当然金融知識も求められてくる。

【6】社会(2)

環境は、地域公害型から、地球環境型へと焦点が移る。中国の汚染が日本にやってくるなど、アジア全体の環境汚染のレベルアップを考える必要がある。

今後は廃棄物処理がクローズアップされる。その市場規模は、巨大化し情報、福祉医療産業と肩を並べるようになる。また、環境ホルモンなど、正体不明の現象も重大視される。

なお、環境問題よりも気になるのは、日本人の若者の悲観論である。日本の若者は他の先進国の若者に比べ21世紀に対して、極端に悲観的である。

安定、安心、安全神話も崩壊し、不測事態も多様化しているので、これに対する国家的視点からの対応が必要である。

【7】技術

日本の国力が低化したと懸念する向きもあるが、科学技術に関しては、複数の国際評価機関で、常にアメリカに次ぐ第二位である。これは日本の強さといってよい。

日本の強さの秘密は、「身体知」である。つまり、宮大工の技術のような、熟練工の技術だ。これは、米国式のマニュアルでは、絶対に継承できないもので、徒弟制度で継承されるものである。つまり、終身雇用組織を維持する論拠にもつながる。

ちなみに、21世紀の先端技術は、エレクトロニクスエネルギーエコテクノロジー3Eである。

なお、懸念すべきは、むしろ石油エネルギーの枯渇である。45年で枯渇するという説が有力だ。ただし、これは地球全体の期限であり、産油国の売り渋りを考えると、石油のでない日本の期限は、あと25年と思ったほうがよい。これに対して日本は最優先の対策を今からこうずる必要がある。

21世紀の主役は、情報化バイオ環境だ。特に情報化は、政府のミレニアムプロジェクトでも筆頭にあがっている。情報技術は、ハードからソフトに移り、コンテンツへと変遷を重ね、これからはソリューションへと移行していく。

また、遺伝子組換え技術をふくむバイオテクノロジーが、拡大する。クローン技術制約技術農業技術などが注目される。問題は、技術と安全・倫理の折り合いをどうつけるかである。

日本で技術を進歩させるには、一つの大型プロジェクトを共同研究させ、出来上がったものをスピンアウトさせていく方式がよい。米国でも、原子力宇宙開発アーバネットなどは、軍事産業という大型開発からスピンアウトした技術が、産業界などに活かされた例だ。

日本でもリニアモータカー高速増殖炉超大型浮体構造知能道路システムなどの分野への集中投資を行い、そこから技術をスピンアウトさせていく方式が次世代にあっては鍵になる。

(ビジネス選書&サマリーより)

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このページは、が2008年3月 4日 02:59に書いたブログ記事です。

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