日本経済 生か死かの選択―良い改革悪い改革 (単行本) リチャード クー (著), Richard C. Koo (原著)

<コメント>

私が本書を面白いと思うのは、著者の鋭い分析やわかりやすい論理展開だけではありません。

著者が多くのエコノミストを含む世の中の考え方と、物を180度違う視点から見ていることです。

現在、財政出動に関する国民のコンセンサスは「過去10年間で140兆円も景気対策を打ったが、結局景気はよくなっていない。だからこれ以上同じことをやっても意味がない!」というものです。

しかし本書の著者は「140兆円使ったから、これぐらいで済んでいるのだ」と言っています。同じ現象を見ているのに、物の見方が違えば、そこから導き出される対応も全く違うものになります。

我々コンサルタントの仕事でも、クライアントが一面的な見方にとらわれていることはよくあります。その場合、それが唯一の見方でないことに気づいてもらうことが、非常に重要な仕事になるのです。


<本  文>

【1】

小泉内閣の聖域なき構造改革の柱は、規制緩和財政再建不良債権処理の3つである。

最初の規制緩和は全速力でやるべきである。だが残りの二つは戦後処理であり、急ぐ必要はない。

急ぐと経済全体がさらに悪化し、政府の財政赤字も銀行の不良債権も今よりずっと増えてしまう。

世界最悪の土地利用がもたらす高コスト体質や、多くの参入障壁は是正されるべきだ。しかし、これが経済を失墜させたわけではない。


【2】

この10年間で日本経済を弱めたもの、それはバランスシート不況である。

日本経済の構造には二つの車輪がある。一つは家計貯蓄の高さであり、もう一つは企業の投資である。家計がせっせと貯めた預貯金を企業が一生懸命借り入れて投資にまわしてきた。

ところがバブルが崩壊し、資産価格の暴落が始まった。投資した際の借金が残っているのに、その資産の価格が大暴落してしまったのだ。

本業であげた利益で借金を返済するようになった。しかも、これを多くの企業がいっせいにやりはじめた。その結果景気が悪循環に陥り、見る見る悪くなっていったわけだ。


【3】

家計は、消費も貯蓄の金額もバブル期も景気が悪化してからもほとんど変わりがない。

これを考えると「一般消費者が将来に不安を感じて貯蓄を増やし消費を抑えているから景気が弱いのだ」という議論は間違いだ。

変わったのは企業の消費のほうだ。企業がお金を借りてつかっていたころと今の企業の消費とでは大きなギャップがある。

銀行にはお金がジャブジャブあるのに誰も借りようとしない。だから金利は下がりつづけるのだ。


【4】

この悪循環は、家計が本当に貧乏になり、一円も貯蓄できなくなるまで続く。つまり大恐慌に陥るまで続くのだ。

バブルのあと、日本経済が大恐慌にならずにここまできたのは、政府の財政支出が、企業の借金返済に回ることでできた需給ギャップを埋め、悪循環を未然に防いできたからである。

財政支出の話になると、評論家はこぞって140兆円も景気対策を打ってきたが、景気はよくならなかったという。

しかしこの十年間で失われた富は株と土地だけで1300兆円にのぼる。これは日本の2.5年分の国内総生産に匹敵する。

にもかかわらず、日本が恐慌に陥らなかったのは、140兆円が日本経済を防いできたからだ。つまり日本の財政政策は有志以来最も成功した経済政策といえるのだ。


【5】

今、日本が取り組むべきは何か?それは企業の借金拒否症である。家計の膨大な貯蓄を誰かが借りて使わないと経済は回らない。

当初はともかく、このままではいつまでも民間の資金需要が回復せず、政府は半久的に財政赤字を出しつづけなければならなくなる。
 
今の日本に必要なのは、財政による景気下支えで、バランスシートをきれいにしたい8割の企業のそれを支援することである。

そして、バランスシートがきれいになった企業が借金拒否症に陥らないよう前向きの構造改革で、面白い投資機会を次々と作ることである。

(ビジネス選書&サマリーより)

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このページは、が2008年3月14日 00:26に書いたブログ記事です。

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