ザ・コンサルティングファーム―企業との危険な関係 (単行本) ジェームズ オシーア (著), チャールズ・マーティン マディガン (著), James O’Shea (原著), Charles Martin Madigan (原著)
<コメント>
コンサルタントの使命は、やはり補佐である。決して経営者の代わりに意思決定するものではないし、万能薬であるはずもない。なぜなら、彼らは経営のプロではないし、彼らが決定への責任を取るわけもない。
しかし、人はときに万能の薬を求め、それにすべてをゆだねる衝動にかられる。特に、経営者は孤独である。なぜなら、企業の中にあって自分だけが誰からも給与をもらわず、与える側なのだ。誰にも相談できないことが山のようにあるのだ。そんなとき、もっともそばにいる偉大なる部外者、コンサルタントは格好の相談相手だ。
もちろん、コンサルタントは、相談相手としてなら気が済むまでいくらでも利用したらいい。しかし、もし様々な決定までコンサルタントに頼るようになったら、その会社は終わりだ。そのこと自体が、その会社の病理といえる。
<本 文>
【1】
コンサルタントの助言には、どれだけの価値があるのだろうか。会社にとって的をえた助言であれば、値がつけられないほど貴重である。
だが、的外れな助言なら、クライアントはたちまち危険な状態に陥る。膨大な費用がかかるばかりか、企業基盤まで脅かされる危険がある。
結局のところ助言の価値は、それを受けたものが進んで支払いたくなる金額に等しいとしか言いようがなさそうだ。
【2】
著書を携えた口の達者なコンサルタントの売りこみ文句には用心するべきだ。アメリカ式経営コンサルティング業界の最大の能力は、何といっても自らを売りこむ能力だ。彼らは、巧妙にキャッチフレーズだけの、評価も判断もできないような、あいまいな概念を売っている場合が多いのだ。
こういう場合、彼らはクライアントに具体的に何をしたか?と聞かれると「成果をあげられるように協力した」という。
また、彼らは抽象化が大変得意である。図表やグラフを駆使して、クライアントを空想ビジネスの世界に連れ込む。しかし、よく考えると、それが自社に当てはまるかどうかわからない。
しかも、彼らはクライアントから集めた事例に少しだけ手を加えて、他のクライアントに売って再び儲けたりしているのだ。これがコンサルタントというものなのだ。
【3】
コンサルタント会社と交渉する前に、何を達成したいかを必ず決めておくことだ。そして、目標が決まったら、本当に部外者の協力が必要かどうかを自問するべきだ。
いずれにしても何も問題がなければ、わざわざコンサルタントを雇う必要はないのだ。壊れていないものを直す必要はないはずだ。
こういう場合でも、彼らはシナジーについての話や、コンピュータが会社の将来を決めるのだといった月並みな説を披露し、金を取ろうとする。
なお、コンサルタントに任せる仕事は、具体的に決めておいたほうがよい。この場合経営者は、全権委任の白紙委任状を渡すことを、絶対に避けたほうがよい。
何しろ、コンサルタントは困っている会社を救えるわけではないのだ。なぜなら、彼らに経営能力やビジョンがあるわけでないのだから、経営者の代わりになれるわけがないのだ。
監督権は決して渡さない。何事につけ、自社の管理職が監督権を行使し、責任を持たせるべきだ。
【4】
また、コンサルタントが語るのは、クライアントが知るべきことではない。聞きたいと思っていることだ。だから、何よりも大切なのは、自社の従業員に耳を傾ける必要があるということである。変化を訴えて稼ぐコンサルタントより、知識のある従業員の方が役に立つ場合も多いものだ。
肝に命じておいてほしいのは、コンサルタントは失うものがまったくないということだ。彼らは、物事がうまくいけば自分たちの功績が主張できるし、うまくいかなくても経営方針の変化や従業員などのせいにして涼しい顔をしていられる。どんなクライアントの中にも、協力しない社員は何人かいるものだ。
だから、失敗したらどうするかまで契約時に決めておいた方が良い。コンサルティング会社には、利益だけでなくリスクも共有させるのだ。
【5】
コンサルティングには、不確実な要素が多いため、問題が起こる可能性は高い。クライアントに腹を立てられたり、プロジェクトに失敗することは避けられない。特に、経験の少ない若手ばかり集めたり、フローチャートを使った説明ばかりで行動が少なすぎると問題が起きやすい。
だから、どんな人物を送ってくるかについては、決して妥協しない方が良い。なぜなら、大物が契約をモノにしたあと、放っておくと必ず小物が送られてくるのだ。本来、パートナーを選ぶのに何の遠慮も要らないはずだ。
なお、コンサルタントがカネに劣らずほしいのは、名声である。彼らは、名声にも市場価値があることを知っているからだ。名声を追うばかりに、成果をあげられそうもない仕事を引き受けてしまう場合がある。この場合も、大きな問題を引き起こす場合が多い。
ただし、ベテランのコンサルタントなら、プロジェクトがうまくいかない可能性が何で、突発的な問題がどこで発生しやすく、これをどう扱うべきかを把握している。特に、コンサルタントとクライアントの関係には、お互いどこにでも非難する余地があるので、何とでも言い訳できるのだ。
【6】
シアーズの事例は、コンサルタントをうまく使った例である。CEOのマルティネス氏は、コンサルタントの選別について、以下のように語る。
まず、信頼しないのはコンサルティング会社の出版する雑誌、セミナーの類である。どこのコンサルタントも、弁舌巧みに、何でもできるようなことを言っているが、そんなことはありえない。
彼らの最大の問題は、自分たちが何でもできると思っていることだ。また、彼らのすぐれた点は、中にはできることもあるということだ。
そして、彼らを知る最善の方法は、いっしょに仕事をしてみるか、仕事をした経験のある人と付き合うことだ。なお、選別にあたっては、次の3つの要素を重視するとよい。まず、技量である。問題点を解決するにあたり、実績を立証済みの技量が必要である。
つぎに、幹部が業務に積極的に参加するかどうかだ。計画を説明するものが仕事を実行するものであってほしい。業務を実行する段になって、別のものやチームが現れては困る。
最後に、担当者が生みだす雰囲気である。彼らが、自分の能力をわが社に受け入れてもらえるように行動できると私自身がが判断しない限り、採用しない。
最後に、君主論の著者マキャベリの助言に関する持論が、経営者とコンサルタントのあり方に関する本質をよく表しているので紹介する。
君主に関する、絶対確実な法則がある。それは、君主が聡明でない限り賢明な助言を受けることはできないということだ。素晴らしい助言を受けて聡明な君主になるのではなく、聡明な君主だからこそ、素晴らしい助言が受けられるのである。
(ビジネス選書&サマリーより)
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