Jパワーへの出資で英ファンドと政府が綱引き、公益と対日投資が争点に

電源開発(Jパワー)<9513.T>への出資拡大をめぐり、英ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)」と日本政府による綱引きが続いている。

Jパワー株を9.9%を保有するTCIは先月15日、保有比率を高めるため、法律に基づき日銀に事前申請したが、審査に当たる経済産業省など政府側は原則30日間の審査期間をこのほど延長。同省は国内電力網の重要設備を持つJパワーへの外資による出資拡大は慎重に判断すべきとの姿勢を崩していない。

一方、TCIのアジア代表、ジョン・ホー氏はロイターに対し、今回の審査は「日本市場の開放度を試す試金石」と強調し、認められなければ国内外での提訴も辞さない構えだ。「公益」と「対日投資拡大」のどちらを優先するのか。政府は難しい判断を迫られている。

外国為替法では、外国資本が安全保障や公共秩序に関連する約20業種に10%以上出資する場合、国の事前審査が必要で、TCIによる今回の投資計画は経産省と財務省が審査に当たる。1)安全保障の確保、2)公の秩序の維持──を損なう恐れがある場合、政府は投資計画の中止や変更を求めることができる。経産省は今月13日、審査期間を最長5月14日まで延長することを決めた。

<経産省は警戒感、TCIは脅威否定>
政府がTCIによる出資拡大に慎重になるのは、1)Jパワーが国内の重要な送電設備を持っていること、2)東北電力<9506.T>に迫る大規模な発電能力を備えていること、3)青森県で原子力発電所の建設計画を進めていること──が理由だ。とりわけ、本州と北海道、九州、四国を結ぶ連係線と、東日本と西日本で異なる電気の周波数を変換し、広域の電力供給を可能にする設備は「電力供給の危機管理という面で重要度が高い」(電力業界関係者)とされる。

TCIは昨年11月22日、Jパワーの業績が悪化しているなどとして、経営改善やホー氏などTCI側からの2人の社外取締役派遣を要求。これが表面化した昨年12月4日、甘利明経産相は記者会見で、Jパワーについて「日本の安全保障の網の中にある企業」と指摘、TCIの動きに警戒感をにじませた。

TCIJパワー株の追加取得分(10.1%)について、原子力発電と送電に関しては議決権を行使しないと表明。ホー氏はロイターとのインタビューで、電力事業者の株主として「あくまでも日本の規制の中で活動することが前提となる」と述べた上で、「安全保障と公共の秩序でわれわれが脅威でないのは明らか」と訴えた。Jパワーへの株の買い増しは「株価が非常に割安」(ホー氏)なのが理由で、「(Jパワーの)支配が目的ではない」(同)としている。

<申請却下なら「日本売り」> 
一方、ホー氏は今回の申請について「外資が日本離れをしている中、世界が注目している」と指摘。もし却下されれば「(資本市場の)透明性が不明確になる」と述べ、「日本売り」を加速させかねないとの認識を示した。

また、申請が却下された場合は「国内外のあらゆる法的措置に打って出たい。国際的な法廷や欧州連合(EU)などが考えられる」(ホー氏)としており、国際的な舞台に論争の場を移すことも検討するという。TCIは、ドイツ取引所によるロンドン証券取引所買収を断念させ、オランダの金融大手ABNアムロには身売りを要求。アムロは欧州3銀行連合に分割・買収されることになった。「世界最強のアクティビスト(物言う株主)」とも言われるだけに、Jパワーや日本政府に対して今後もさまざまな揺さぶりをかける可能性は否定できない。

日本政府内でも、渡辺喜美金融・行政改革担当相が「一般論として、鎖国的とか閉鎖的な印象を与えるのはよくないと思う」と述べるなど、TCIによる申請を肯定的に受け止める意見もある。

<政府は買い増しの意図に注目>
一方、審査する経済産業省など政府側は、TCIの買い増しの意図を重視して審査を進める方針。外資が電力など公益産業に10%以上出資する場合、外為法上の申請書類に投資目的を詳しく記入するよう求めれらる。政府によるTCIへのヒアリングもこの点を中心に行われている。

政府関係者によると、ファンドによる投資でも、投資利益の拡大など純粋な投資目的の場合と、経営に深く関与する形での投資拡大とでは審査の踏み込み方が違ってくる。「株主総会において、取締役の選任や増配、定款変更など経営方針が変わるがい然性が高くなる提案があれば、経営介入の度合いは強いと判断される」(同政府関係者)という。TCIが昨年、Jパワーの株主総会で年間配当について、会社提案の1株60円から130円への増配を要求したことや、昨年末の取締役派遣の提案といった過去の経緯を踏まえ、「総合的な判断になる」(同)としている。

こうした中、TCIは1月末、TCIJパワー両者から中立の立場の社外取締役3人の派遣をJパワーに提案し、ホー氏などTCI側2人の取締役派遣の提案を取り下げた。両者は今月22日、会合を持ったが、Jパワー側は現在の企業統治体制に問題はないとして、新たな提案も拒否。TCI側は「Jパワーとの意見の相違を縮めないといけない」(ポー氏)としているが、こうしたやり取りが政府の審査にどう影響するかも注目される。

<日本の外資規制は過剰か>
政府側は、安全保障や公益に関連した業種に対する外資規制は先進国にも広く存在するとして、日本が他国と比較して特に排他的とみられることへの反発が強い。米国には国家安全保障を目的に外国資本の投資を規制する「エクソン・フロリオ条項」があるが、対象は全業種にわたり、取引終了後でも審査できる。

フランスでは、軍事にも転用できる民生技術など11業種において外資の投資を規制しているが、議決権の3分の1以上を取得する場合が対象で、出資比率による規制は日本に比べて緩い。ただ、同国の電力供給を大半を担うフランス電力は、部分的に民営化されたもののフランス政府が約85%の株式を握っており、外資による電力業界への戦略投資は事実上、閉ざされている。

英国にも、安全保障を含め公共の利益を阻害する場合、国内外の企業を問わず企業合併について政府が介入する仕組みがあるが、競争阻害の防止といった観点が主たる理由とされ、緩やかな規制になっている。果たして日本における外為法上の規制は過剰なのか。TCIによるJパワー株買い増し申請は、日本の外資規制のあり方を問う契機になりそうだ。

Yahoo!ニュースより)

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このページは、が2008年2月25日 20:15に書いたブログ記事です。

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