「e‐ビジネス用語」の勘どころ
基礎編
eビジネス
【e-business】
コンピュータとネットワークの力を借りて、商売をすること。IBMがキャッチフレーズとして使っている。eはエレクトロニクスの頭文字。ネットワークとは、少なくとも現時点ではインターネットと考えてさしつかえない。
宣伝や呼び込みから商品陳列、接客、勘定、顧客管理に至るまで、ネットワーク上で展開すれば、店にとっては経費節減につながり、客にとっては利便性が向上する。ただし、店も客もインターネットに接続できるコンピュータが使えなければ、始まらない。たとえば、通販の注文のためにわざわざ電話を引く人はいない。家に電話があるから、通販や出前を利用するのだ。とすれば、eビジネスのためには、家にネットワーク接続されたコンピュータがふつうに存在している必要があるが、そうなるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
基礎編
ドットコム
【dot-coms】
eビジネスは、インターネット上にウェブサイト(ホームページ)と呼ばれる専用スペースを確保し、そこで商売をする。ウェブサイトの位置は、「URL」と呼ばれる文字の羅列(たとえば、 http://www.abc.com )で表される。インターネット上での住所や電話番号に相当するものだ。客は手元のパソコンでURLを指定して、めざす店にたどりつく。最近は、テレビCMや雑誌の広告の片隅にURLを記載している企業が増えている。
米国では、インターネットにウェブサイトを開設し、そこで積極的にビジネスを展開している企業を指すとき、URLの末尾が「.(ドット=ピリオド)+com(コム)」であることから、総称的に“ドットコム”カンパニー(略して「ドットコム」)と呼んでいる。最近は、特にインターネットを活用してそれなりに成功を収めている企業について、称賛の意を込めて「ドットコム」と呼んでいるようだ。たとえば、世界最大級のインターネット書店で有名な「アマゾン・コム」(URLは http://www.amazon.com )は、ドットコムの代表例だろう。日本企業の場合、URLの末尾が「co.jp」となることが多いが、それでも細かいことは抜きにしてドットコムと呼ぶ。
当たり前のことだが、インターネットで店を開けば誰でも繁盛するわけではない。成功しているドットコムの陰には、閑古鳥が大合唱しているような“ドットコム崩れ”が多数存在する。インターネットで繁盛している店は、インターネットでの商売に向いたノウハウ、資質、条件を備えているからにほかならない。銀座で繁盛している店は、銀座に店を開いたから儲かっているわけではなく、銀座での営業ノウハウを持っているから成功しているのと同じである。
基礎編
B to B (B2B)、B to C (B2C)
【Business to Business, Business to Consumer】
数年前、インターネット・ブームになるや、インターネットにはありとあらゆる電子商店が雨後のタケノコのごとく誕生した。人で賑わっているところに屋台が並ぶのは、洋の東西を問わない。社寺の境内も電脳空間も大差はない。そういう当たり前の現象も、ネットワーク上になると、「エレクトロニック・コマース(EC、電子商取引)」と大仰な名前で呼ばれる。
ところが祭りの屋台と違って、ECはさっぱり儲かっていない。祭りなら、どの店だろうと値段も味も変わらないと踏んで手近な屋台で済ませるところだが、インターネットでは各店の比較がいとも簡単にでき、客の評判も国境を越えてすぐに広まる。ちょっとでもレベルの低い店は、優良店の引き立て役にしかならない。国境も距離も関係ないので、世界中の二流店、三流店に引き立てられたひと握りの一流店は、たちどころに客を集める。おまけに、インターネットではカネをかけず片手間でも店が開けるなどと宣伝されたものだから、三流店、四流店はゴロゴロしており、引き立て役には困らない。超優良店は笑いが止まらない。インターネットは舞台が一つしかないのだから、役者同士が簡単に比較されてしまうのは仕方がない。そうやってスポットライトを浴びているごくわずかな優良店を除けば、基本的に閑古鳥がグローバルに鳴きまくっているのがECの実態だ。
たしかにネットワークの商売は決済手段が未成熟なうえ、客にとっては品物に触れない、店の素性もわからない、おまけに世の中では肝心のパソコンを持っていない人のほうが圧倒的に多いとあっては、儲からないのも無理はない。特にカネの受け渡しは、渋谷や新宿などで電子マネーの実証実験をやっているが、とても成功しているとはいえない。
では、ECに未来はないのか。考えた末に誰かが言い出した。「素人のいちげんさん相手じゃ、儲けも知れている。会社相手ならば儲かる」と。その結果、ECは「対消費者」と「対企業(=企業間)」に分けて考えられるようになった。対消費者は、Business to Consumer(企業対消費者)という英語の頭文字を取ってB to C、対企業は、Business to Businessの頭文字からB to Bと呼ばれるようになった。最近は、発音が同じというだけでB2C、B2Bという表記も増えてきた。
なるほど、B to Bならば、必ずしもその場で現金決済する必要がなく、お互いに信用調査も可能。長期的、継続的に大口の取引も期待できる。インターネット登場前から大型コンピュータを結んで取引してきた実績もある。カンバン方式のカンバンを電子カンバンに置き換えれば、そのままB to Bである。このため、短期的にはB to Cで利益を上げることができても、長い目で見れば、B to Bのほうが本格的な収益源になるとの見方が強まっている。また、企業向けとなると市場が急成長してから参入するのでは機会損失も大きいだけに、是が非でも乗り遅れたくないとの思惑が働いているようだ。かつての円高不況の際、大手メーカーが続々と海外に生産拠点を移したとき、下請け企業がこぞって海外へと後追い脱出して産業空洞化と騒がれたのは記憶に新しい。
本来のB to Bは、ネットワークのメリットを生かして、不特定多数のB(企業)の中からその時点で最も有利な条件の相手を選んで取引することを指しているのだが、日本のB to Bは、大手が系列の下請けを引き連れてインターネットに場を移すだけの“系列B to B”に行き着くのか。とすれば、系列B to Bなるものは単なる現実世界の言い換えにすぎず、経営規模の大小や地理的条件を問わずにさまざまな企業が既存の流通ルートにとらわれずに取引できるというネットワークのメリットは生かされないことになる。
お客を呼び込む
ウェブ
【Web】
ネットワークの正体は、単なる電話線である。その電話線に電話機でなくコンピュータをつなげれば、コンピュータ・ネットワークになる。地球規模で縦横無尽に張り巡らされたネットワークのところどころに、ホームページを仕込んだコンピュータ「サーバー」が点在している。このネットワークは、まさに蜘蛛の巣のような状態なのでウェブと呼ばれる。
自宅のパソコンでURLを指定してどこかのサーバーに接続すれば、そこに仕込んであるホームページが閲覧できる。もっとも、通り沿いに店を開くのと違って、ネットワーク上では、店の存在に偶然気づいてもらえることは皆無に等しい。通販会社がテレビCMで自社の電話番号を連呼しているのと同様に、eビジネスも店の位置を示すURLを宣伝することが第一歩となる。
ネットワーク上では、基本的にどこにサーバーがあろうと、客にとって店への行きやすさに差はない。店までの物理的な距離は大した問題ではないのである。店にしてみれば、大通りだから家賃が高い、裏通りは立地が悪い、片田舎で人通りが少ないといった悩みはなくなるが、逆に言えば、現実の世界で立地条件の良さだけで商売をやってきた店は、ネットワーク上ではセールスポイントがないことになる。
お客を呼び込む
コンテンツ
【content】
情報の中身のこと。絵(写真)や文字を使って客に商品を買ってもらうのだから、わかりやすい商品の絵を置いたり、商品の特長がわかる文章を用意したりする必要がある。が、これが実に難しい。街にある現実の店であれば、単に商品が陳列されているだけで、独自に商品の特長を説明していることは稀であろう。そうこうしているうちに、店員は商品知識が欠如していく。客からの質問にも答えられなくなるが、それでもなんとかなっていた。
しかし、ネットワークの店でもこの調子では、客は目隠しされて「エイヤッ」で買い物をするのと同じだ。そんな店には客は寄りつかない。コンテンツなどと遠回しの言葉ではわかりにくいのだが、eビジネスにとって何よりも大切なコンテンツは、商品に触るることができない客が商品を買おうと決意できるだけの情報にほかならない。ということは、コンテンツとは、店員の商品知識そのものであり、客に対する姿勢そのものなのである。なお、日本ではコンテンツと複数形のような言い方が定着してしまったが、複数形のcontentsは「目次」の意味である。「中身」という意味ならコンテントと単数形らしく表現するのが正しい用法である。
お客を呼び込む
バーチャル・モール
【virtual shopping mall】
インターネット上の商店街。一軒の商店が細々と商売するよりも、複数の商店を集積したほうが認知度も集客力も増すというのが商店街のコンセプトだ。一カ所でさまざまな店に立ち寄ることができるので、買い物客にしてみれば移動の手間がかからない。
ところがインターネットの世界では、一部の例外を除き、多くのバーチャル・モールでは閑古鳥が鳴いている。ネットワーク上では、バーチャル・モールと称して店が何百店、何千店集積されていようと、実体がないのだから、残念ながら通行人には気づいてもらえない。いや、むしろ、何万店、何十万店もの店が存在するインターネット自体が巨大な商店街なのである。とすると、バーチャル・モールとは、商店街の中に新たに商店街をつくるようなものなのかもしれない。
ともかく、一カ所でさまざまな店を訪問できる商店街のメリットは、店側にしてみれば囲い込みの発想以外の何ものでもない。しかし、そのような考え方はインターネット上では無意味に近い。その証拠に、同じ商店街の中だけでなく、別の商店街へもマウスのクリック一つで簡単に移動できる。そこが現実の商店街との大きな違いだ。ほかの商店街への移動が面倒くさいからここで済まそうなどという弱みにつけ込むことはできないのである。
つまり、ネットワーク上で商店街をつくることには、現実世界ほどの大きなメリットはないのだ。第一に、立地条件や規模といった従来の発想は大して役に立たない。そもそもeビジネスは、立地や規模、資本に関係なく勝負ができる世界なのだから、立地発想やスケール発想から生まれた商店街にしがみつく必然性はないのだ。
実際、ネットワーク上で売れている店は、立地や規模ではなく、評判や口コミが集客力になっている。eビジネスのターゲットとなるインターネット利用者の多くは、ネットワーク上のコミュニティーや会議室で情報を交換している。実際のユーザーの声が他の潜在顧客の掘り起こしにつながっているのだ。ネットワークでは、商品を手に取って確かめられないからこそ、すでに使っているユーザーの声は、バーチャル・モールにある下手な商品写真よりも説得力がある。
こうした口コミの場として注目されているのが、電子メールを雑誌風に仕立てたメールマガジンや、ネット上の電子会議室だ。マガジンといっても発行しているのは本格的な出版社から趣味の個人までさまざま。マガジンを通じて読者のコミュニティが生まれ、そこでの投稿や記事から人気ショップが誕生することも少なくない。また、パソコン通信やインターネットの会議室で話題に上った商品や店が人気を集める例も多い。
お代を頂く(決済・集金)
電子決済
【electronic payment】
誘拐事件では身代金の受け渡しが最大の難関といわれる。匿名性の高い携帯電話を駆使して逆探知捜査の網をくぐり抜ける誘拐犯も、身代金の受け渡し場所は相変わらずインターチェンジや高架下と相場が決まっている。多くの場合、ここで御用となる。脅迫状や身代金要求といった情報は電子化の波にうまく乗るが、現金はそうもいかない。相手と直接接触せずに匿名性を確保したうえでの現金受け渡しが困難であるからこそ、誘拐事件は成功率が低く、犯罪そのものの大きな抑止力になっているのだ。
ところが、ネットワークの商店にとっては、このことが商売繁盛の抑止力になってしまっている。注文から決済までネットワーク上で完結できないのだ。電子マネーもかけ声ばかりで普及には至っていない。クレジットカードの番号をやりとりするという手もあるが、誰もが持っているわけではないうえ、現金のような匿名性も低い。おまけに日本の場合、クレジットカード会社の加盟店審査が厳しく、中小企業や個人商店では簡単にカード決済を導入できないでいる。このため、金融機関での払い込みや宅配業者の代引き制度を利用しなければならない。オンライン・ショッピングでは、注文や問い合わせが自宅に居ながらにしてきわめて簡単にできるだけに、現金受け渡しの不便さが際立ってしまう。
お代を頂く(決済・集金)
ネット・バンキング
【network banking】
銀行のATM(現金自動預入払出機)の前には、昼休みともなれば順番待ちの長蛇の列ができる。「自宅にATMがあればいいのに……」。そんな発想で生まれたのがネット・バンキングだ。要は、自宅や会社のパソコンがATMになったと思えばいい。当然のことながら現金払い出し機能はないが、口座振替や残高照会などが可能だ。これまでは実際に銀行に口座を持っている利用者向けの副次的なサービスとしての位置付けだったが、一九九九年七月に発表された富士通とさくら銀行の合弁によるネット専門の銀行は、ネットワーク経由“でも”利用できる銀行ではなく、ネットワーク上“だけ”で完結する独立銀行となる。eビジネスの弱点であるネットワーク上での決済を実現するうえで、こういったネット銀行の口座振替は有力な決済手段になるはずだ。
品を届ける
ロジスティクス
【logistics】
ネットワークで商売をするうえで、最もネットワークと相性が悪いのが配送である。ネットワークを使うことで店舗家賃や人件費などのコストがどんなに削減できても、品物の配送だけは従来の物流に頼らざるをえない。たしかにソフトウエアや音楽など電子化してネットワークでやりとりできる商品も存在するが、これらはあくまでも例外だ。したがって、ハイテクを駆使したeビジネスでも、品物の配送ばかりは渋滞やストで簡単に止まってしまう。品物の移動速度も「ビット/秒」とは無縁の「キロメートル/時」の単位だ。いくら距離や時間をあまり意識させないeビジネスとはいえ、配送は法定速度にがんじがらめに縛られている。配送スピードの高速化は、道交法の改正を待つしかないが、だからといって物流面で何も工夫できないわけではない。
そこで、品物の到着を待つ客のイライラを少しでも解消しようと、いろいろな工夫が生まれている。たとえば、客がホームページで注文番号を入力すると、「○月○日○時○分、成田空港通関手続き中」といった具合に、品物が現在どのあたりでどのように処理されているかが手に取るようにわかるサービスを提供する業者もある。
また、配送業者の応対もいろいろな工夫ができる。ネットワークで買い物をした場合、客が初めて実物の商品を手に取るときに目の前にいるのは店員ではなく宅配業者である。客本人と接触できる唯一の人間が配送業者なのである。いわゆる御用聞きが単なる配達員でなく、配達先の情報を収集し、客に商品情報などを提供する重要な役割を果たしていたことは言うまでもない。
ところが、eビジネスで客と唯一の接点となる配送業者は、まだそういう役割を果たしていない。つまり、eビジネス側が配送業者を“情報エージェント”として活用していないのだ。もったいない話である。今後、eビジネスが普及するにつれ、当然ながら「思っていた商品と違う」といった理由で、客が商品の受け取りを拒否するケースも増えるだろう。あるいは、客から商品についての質問を受けるかもしれない。こうなると、配送業者も単なる配送業務にとどまらず、販売店の店員としての振る舞いを要求されるはずだ。
お客をつなぎ止める
インタラクティブ
【interactive】
言ってみれば商売の基本。「相互作用」や「双方向性」などといった小難しい言葉を持ち出すまでもない。商売は相手あってこそで、自分の思いどおりに事は進まない。たとえ自分に作戦があっても、しょせん、相手の出方次第。客にとっては店次第、店にとっては客次第なのだ。客の様子をうかがいつつ、どう売るか、どう応じるかを決める。客も人間だから、こちらの対応が悪ければ二度と来店しなくなる。とすれば、物理的に客の顔が見えないネットワークでの商売だからこそ、店頭よりも敏感に客の“顔色をうかがう”努力が欠かせない。顔が見えないのだから気楽な商売などという店主は、閑古鳥の存在にも気づかなくなるのがオチ。
お客をつなぎ止める
ワン・トゥ・ワン・マーケティング
【one-to-one marketing】
客を十把一絡げにして商品づくりや顧客への応対をしてきた悪しき態度を戒める言葉。「客は一人一人違うので、売り方も客に合わせて変えるべきじゃないか」という至極当然のことをあえて言葉にすれば、こうなる。
もっとも、客が増えてくれば、客の好みはもちろん、顔や名前さえ思い出せなくなるもの。そこで物覚えのいいコンピュータを味方につければ、商売の規模が大きくなっても、顧客ごとに過去の買い物の頻度や嗜好などを即座に割り出せるため、客への応対にとまどわずに済む。
そんなコンピュータの使い方の一つがデータウエアハウスである。日頃の取引や請求、支払い状況など、さまざまなデータを蓄積しておき、必要に応じて必要なかたちで情報を引き出し、ダイレクトメールやアフターサービスに活用すれば、結果的に客のつなぎ止めに役立つ。
しかし、白い洋服ばかり買っている客に、「新しい白の洋服が入りましたよ」と誘うべきか、「たまには黒もどうです?」と提案すべきか。そんな判断まで過去のデータをもとにコンピュータが決めてくれるわけではない。結局は店主の腕次第。臨機応変に客の心を読む眼力がものを言うのだ。
お客をつなぎ止める
CTI
【computer-telephony integration】
電話とコンピュータを連携させてビジネスに活用すること。もともと、通販などの電話注文受付センターできめ細かい対応の実現をめざして考案された。たとえば、発信者番号表示機能を応用すれば、かかってきた電話に出る前に、発信者の番号をもとにコンピュータが顧客リストから過去の購買歴やら趣味やら家族構成やらを見つけだし、手元のコンピュータ画面に即座に表示することも可能だ。相手を把握してから、初めて受話器を取り、「三カ月前にお買い上げいただいた○○はいかがでしたか」「××をご購入いただいてから一年になりますが、そろそろ新モデルの××はいかがですか」などとやれば、客は大感激という寸法だ。
最近は、コンピュータが自動的に客に電話をかけて「そろそろ××はいかが?」と営業するシステムもあるが、ここまでくると、きめ細かい営業どころか、いかに手を抜くかという発想が見え見え。本来、店員の記憶力では覚えきれないこともあるので、足りないところは機械に手伝ってもらい、客が増えてもきめ細かく対応する体制を整えるというのが目的のはず。ところが、客のことを覚えるのが面倒なのでCTIを導入する企業もある。そのような使い方では、かえって白々しさばかりが目立ち、客にすぐに感づかれてしまうだろう。
お客をつなぎ止める
顧客満足
【customer satisfaction】
eビジネスに関わる用語は、実のところ、商売の基本ばかりであることにお気づきだろうか。いや、むしろ、文字や絵がコミュニケーションの手段で、お互いの顔も姿も見えず、商品に触ることもできないという制約だらけの中で商売をするeビジネスだからこそ、ますます商売の基本が大切なのだ。
ネットワーク上にある店での買い物は、客にとって決して豪華な楽しみではない。散歩を兼ねたウインドウ・ショッピングなどという満足感もない。街の匂いのようなものもない。客は住み慣れた自宅のパソコンの前にいる。街や店内の雰囲気にだまされることもない。ウェブサイト画面の表示が遅いというだけで、あっという間に去ってしまう。何のことはない、マウスのクリック一つである。
そんな冷静な客を相手に、何を武器に、どんな商品をどのように売るというのか。現実の店舗ならば、豪華な柱や分厚いドアを使って店を立派に見せ、客の心をつかむことができるかもしれない。しかし、同じ発想で、立派なドアの“写真”をホームページに用意しても、客は苦笑するばかりだろう。
多少サービスが悪い店でも、駅前で便利だから仕方ないと半ばあきらめ顔で利用してくれていた客も、ネットワーク上では簡単によそのサービス満点の店に流れてしまう。ネットワークでは、立地や規模、店構えなど、商売のほんとうの実力とはかけ離れた要素で客を集めることはできないのだ。ネットワークでの店舗経営は、初期投資こそ少ないかもしれないが、商売自体は決してお手軽な姿勢でできるものではない。何よりもまず、価格、サービス、納期、サポートといった商売の基本要素で競争力を高め、そのうえで付加価値を提供しなければ生き残れない。このような条件を満たして生き残れる店であれば、当然、利用客の顧客満足度は高いだろうし、固定客となってくれるはずだ。その意味では、経営者にとって商売の才能が最も試される場である。
(PRESIDENT2000年1月号より)
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